弐ノ巻
ひろいもの
2
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「お父上様もお可哀そうですわ。次期にと考えている御二方が片や女嫌い、片や…。…瑠螺蔚さま」
「え、な、なに?」
由良は意味深に笑ってあたしを見上げた。
「高彬兄上様にも困ったものですわね。前田の瑠螺蔚姫との婚姻の内諾など…佐々家では誰も知らなかったのです。聞いた時、お母上様は卒倒してしまわれました」
「それは悪いことを…じゃなくて、当人のあたしだって聞いたのついこの前よ!?」
「そこが、兄上様のいけないところですわよね。きっと兄上様は、外堀を埋めて、盤石な地盤を作ってから、瑠螺蔚さまに正式に申し込むつもりだったのでしょう。本当に瑠螺蔚様をお好きなんですから。不器用な兄上様ですわ。こういうことは、本人の気持ちが一番重要だと言うことは、3つの童にすらわかることですのに、ねぇ瑠螺蔚さま」
いやー。
こういう話ってどういう顔して聞けばいいんだろう。
由良に面と向かって「兄上様はアナタが好きなんです」って言われるのって、何か物凄く居心地が悪い。由良のこと妹みたいだと思ってるからかな。身内に恋愛沙汰を指摘される背筋がもぞもぞとする感じがしてしまう。「そうそう、あたし、高彬に愛されちゃって。女冥利に尽きるわーアハハ」とでも言っておけばいいのだろうか…。
あたしは目を泳がせながら挙動不審に頷いた。
「そ、そう、ね…」
「ですが、それとこれとは話は別。積年の思いを募らせている兄上様に同情は致しますが、節度はなくてはなりません。なにより、瑠螺蔚さまのお気持ちを無視されたようなこの行い、わたくし信じられませんっ」
「ゆ、由良、何度も言うようだけどさ、このオコナイもそのオコナイも、多分、何にもなかったと…」
「瑠螺蔚さま。気づいておられないでしょうけど」
「え?うん何が?」
「それ、高彬兄上様のものです」
それ…って、どれ?
あたしはきょろきょろと周りを見回した。
由良はあたしにわかるように、言い足した。
「そのお召し物、高彬兄上様のものです」
お召し…お召し物!?
あたしはばっと自分の着物を見た。
や、やだ、なにこれ!
由良の言う通り、あたしが着ているのは、今日の空のような浅縹色をした、男物の着流しだった。
一瞬で顔に熱が籠るのが自分でも分かる。
なにこれどういうことよ!?
高彬は着流しなんてめったに着ないから、見慣れていないあたしはこれ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ