弐ノ巻
ひろいもの
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んて四海に鳴り渡る程だし、あんたの実の兄弟だけで何人いるやら。義兄弟までなんて…流石のあたしでも覚えきれないわよ。んで、その惟伎高がなぁに?」
「惟伎高兄上は、有体に言いますと、くる縁談みなちぎっては投げちぎっては投げして、ついに僧の道に入られた筋金入りの女嫌いですわ」
そ、それは…凄い。
「ちなみに…いくつ?」
「確か…まだ瑠螺蔚さまより二つ三つ程上ですわ」
あたしは喉の奥で唸った。それは本当に凄い。山ほど来る縁談に嫌気がさして、あたしと同じぐらいなのに出家したってことよね?佐々家には珍しい、激情家のようだ。
「惟伎高兄上様は、どんな美姫にも見向きやしないと、お父上様は大層な嘆きようです」
「いやでもそこまで嫌がられたら、もうしょうがないんじゃ…忠政様もさ、息子なんて山ほどいるんだから、なにも惟伎高ひとりくらい女嫌いで妻取る気がないのがいてもいいんじゃないと思うんだけど」
「それが、そうもいかぬ理由があるのです」
由良は声を潜めた。
「他家には知る由もございませんでしょうが、お父上様は、高彬兄上様か、惟伎高兄上様に佐々家の家督を継がせたいと、お考えに為られているのですわ」
「え!?惟伎高か、高彬ぁ!?」
「こ、声が大きゅうございます。瑠螺蔚さま、まだ朝ですので…」
「そんなことより!それってホント?」
「はい」
な、何と言う大穴…。
高彬は、正室の子だけれども男の中で一番末っ子だし、惟伎高は、高彬の妹の由良が「義兄」と言うからには側室の子だ。
一般的には正室の長男が家を継ぐのが普通なのだけれど、流石子沢山の佐々家、きっと実力主義なんだわ…。
高彬はあんなぽやっとしてて実はデキる人であるらしいのは主君の織田家も認めるところであるし、高彬に栄養を持って行かれたのかダメダメな兄貴集団を見ていると高彬が跡を継ぐってことも勿論驚きはすれども納得できるんだけれど。
側室の子っていう憂慮されるべき点があっても、そんな高彬と競り合う惟伎高って…どんな人!?
「今は、僧…てことは惟伎高、還俗するの?」
「はい。もし惟伎高義兄上様が佐々家の次期当主になられるのでしたら、そうなると思います」
「ふーん…。そう、よね…」
なんだかかわいそうな気も。佐々家の次期当主に納まっちゃったら、女は嫌いだ妻はいらないなんて我儘通らないだろうし。
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