第二幕その三
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ウィーンだけはある」
彼はテーブルの上の料理を食べながら呟いた。
「洗練されているというのはこうした料理を言うのかな。うちの料理とは違う」
だが彼はそう思いながらも故郷の料理も思い出していた。
「私にはどちらが合うかな」
それは自分でおおよそのことはわかっていた。だが今はこの都の酒と料理を楽しむことにした。
「土産話にはいいな」
彼は食べ続けた。そして騒ぎには背を向けるのであった。
その頃フィアケルミリは男達に囲まれながら螺旋階段のところに来ていた。
「皆さん」
彼女は高い声で周りにいる彼等に声をかけた。
小柄で丈の短い白いドレスを身に纏っている。明らかに舞踏用のドレスではない。どちらかと言うと演劇用であろうか。そして羽のついた絹の帽子を被っている。その帽子からは金色の巻いた毛が零れ落ちている。
その金色の巻き毛が覆う顔は白く可愛らしい顔立ちをしている。まるで少女のようにあどけない表情だ。そしてその中に湖よりも青い瞳と紅の薔薇の色をした唇がある。その唇の端の笑みはあどけない顔とは違って誘惑を漂わせている。少女の趣と娼婦の妖しさを併せ持った顔であった。そしてドレスの胸には深紅の花があった。
「皆さんは天文学にはお詳しいでしょうか」
彼女は彼等にそう尋ねた。
「いえ」
彼等はそれに対して首を横に振った。
「残念ながら私達は」
どうやらこの場には天文学者はいないようである。
「そうですか」
だが彼女にとってそれはどうでもいいことであるようだ。言葉を続けた。
「皆様は御自身のことがわかってはおられませんわ」
彼女はくすりと笑ってこう言った。
「といいますと」
「殿方は生まれついての天文学者ですわ。星を探し出すことの天才ですから」
「はて」
だが彼等はそれには首を傾げた。
「それはどういう意味ですかな」
「うふふ」
ここでフィアケルミリは笑い声を出した。それから答えた。
「皆さんは星を探し出されるとそれを崇められますわ。そしてその星とは」
螺旋階段の下に彼女がいた。アラベラである。
「こちらの方ですわ」
そう言いながら胸に差していた花を手にとった。そしてそれをこちらに顔を向けたアラベラに投げる。
アラベラはそれを手にした。そこで一同は歓声に包まれた。
「また賑やかだな」
マンドリーカはそれをよそにまだ食事を採っていた。そこに誰かがやって来た。
「あら」
それはアデライーデであった。
「貴方だけですね」
「はい」
彼はそれに答えた。
「アラベラは」
「別れを告げられに行かれました」
「別れを。誰にですか?」
「娘時代にです」
彼はそれに対して微笑んでそう答えた。
「新たな時代に足を踏み入れられる為に」
「そうだったのですか」
ア
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