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アラベラ
第二幕その二
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させた。
「嬉しいですわ。私なぞの為に。ですが」
 彼女はここでためらいがちに顔を伏せた。
「私にそこまでして頂く価値はありませんわ」
「いえ」
 だがマンドリーカはそれに首を横に振った。
「私にはあります。貴女はそれ程素晴らしい方なのですから」
「またそのような」
 彼女は身を引くそぶりを見せた。だがマンドリーカは真剣であった。
「私の全てを貴女に捧げましょう。それが偽りだと思われるなら・・・・・・」
 彼はここで一旦言葉をとぎった。それから再び口を開いた。
「私は永遠に貴女の前から姿を消しましょう」
「そこまで思われているのですか」
「はい、この想い、神にかけても誓いましょう。永遠に変わらないと」
 彼の声は次第に強くなってきた。アラベラはそれを受けて頷いた。
「わかりました」
 そしてこう言った。
「今まで私は待っていました。私を心から愛して下さる方を。私を力強く愛して下さる方を」
 マッテオにも他の三人の伯爵達にもそうした愛はなかった。彼等はただ彼女を崇拝する愛であった。
 だがアラベラはそれを本当の愛とは思えなかったのだ。マンドリーカの様に純粋で、それでいて力強く自分に向かって来てくれる、そんな愛を待っていたのである。
「では・・・・・・」
「はい、私は元々決めておりました。今日で娘時代に別れを告げるつもりだと」
「別れを、ですか。娘時代に」
「ええ。そして新しい時代に足を踏み入れるつもりでした」
「それが今日」
「そうです、そしてその永遠の伴侶を選ぶつもりでした。そしてその人が今日私の前に姿を現わして下さると信じておりました」
 彼女はそう言いながらマンドリーカを見据えていた。目の光が強くなっていた。
「そして今姿を現わして下さいました」
「それは・・・・・・」
「貴方ですわ」
 アラベラは微笑んでそう言った。
「ようやく私の前に姿を現わして下さいましたね」
「はい」
 マンドリーカはそれを受けて頷いた。
「私を選んで下さったのですね」
「いえ、違いますわ」
 アラベラは首を横に振って答えた。
「貴方が私を選んで下さったのです、永遠の伴侶に」
「では・・・・・・」
「はい。貴方の申し出を謹んで受け入れさせて頂きます」
 それで全ては決まった。アラベラの娘時代が今終わりの始まりに入った。
 二人はその終わりの始まりの中に足を踏み入れた。だがそれはあくまで終わりの始まりであり全てが終わったわけではないのである。
「それでは水が必要ですね」
「水?」
「はい、これは私の故郷の習わしなのですが」
 マンドリーカはそれについて話をした。
「結婚が決まった娘は自分の家からコップに一杯の清らかな水を夫となる者のところへ運んで来なければならないのです。結婚を清める水を」

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