イゼルローン哨戒任務
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エル・ファシル管区警備艦隊、第十偵察隊ソヨカゼV39艦長のヤン・ウェンリーです。
現在わが艦はこの宙域を偵察任務中ですが、貴船団の目的を伺っても構いませんか?」
ひっそりと准尉がワレンコフ代将相当官のデータをヤンのモニターに転送する。
現自治領主ワレンコフの親族で、イゼルローン方面軍司令部と後方活動の業務契約を結んでおり、命令系統はイゼルローン方面軍司令部に属する。
所属船団は1000隻程度でその半分を輸送船がしめる等のデータを眺めながら、ヤンは商人らしいふくよかな笑みを見せるワレンコフを眺めた。
「何、ゴミ漁りだよ」
イゼルローン回廊出口から同盟領にかけて、同盟と帝国が幾度と無く戦火を交わした結果、無数の残骸が浮いている。
それすら、無駄に広がる宇宙空間において塵にしかならないのだが、その手の残骸は金になるのだ。
敵国艦艇なら研究用に、自国艦艇なら遺品回収に。
そうしたゴミ漁り専門の連中らしい。
「何か変わった事はありませんか?」
「今の所はないな。
どうかね?
こちらは、同盟軍公認の商人でもある。
何か入用な物があったら融通するが?」
げに逞しきは商人なり。
あまりに広大な戦場ゆえ、同盟・帝国軍ともどもこの手の商船からの売買は自己弁済に限り黙認していた。
こんな所で、酒や煙草の嗜好品が手に入るならば兵の士気も大いに上がる。
それを逃すような指揮官は大体戦に負けるのだ。
「お願いします。
良い紅茶葉とブランデーがあったら」
「わかった。
女はどうだ?」
飲む打つ買うは戦場の花。
きっとあの輸送船のどれかが移動娼艦にでもなっているのだろう。
ヤンとて男である以上、その誘惑が無い訳ではないが、そこを帝国軍に襲われたら目も当たられないと首を横に振った。
「遠慮しておきましょう。
帝国軍はどうかしりませんが、同盟は女性兵の比率が高いので」
古くからの軍隊から伝わる有名かつ卑猥なたとえの男女比は、
「パンが一つに対して、ソーセージが四個」
まで同盟軍の女性将兵比率は接近していた。
その貢献に大いに役立っていたのは、現在通信を繋いでいる准尉をはじめとしたアンドロイド達なのだが。
「了解した。
互いの位置情報を交換しておこう。
あと、他の艦にも我々の事を知らせてくれると助かる」
「了解しました」
物資購入の手続きをしながら、呟いた准尉の言葉を隣にいたアルテナ中尉が耳にする。
それを聞いて顔をしかめたのも仕方がないだろう。
「順調に襲撃フラグが立っていくなぁ……
アッテンボロー中尉に頼んで、あの船団の防衛戦闘のデータ構築しておかないと……」
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