SAO編−白百合の刃−
SAO34-それぞれの一日
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私は店を出ようとする二人に咄嗟に声をかけてしまった。
「あ、はい。あのですね、ここ『リンダース』には私達のギルドハウスがあるのですよ」
「そうなの。でも近いから戻る必要あるのかしら? それともエックスが我慢強くないからかしら」
「一々オレをディスらなければ気が済まないのかよ、おめぇは」
「そうじゃないです。毎回リズベットさんがありがたいことに、わたし達の家に持ってきてくれるんですよ」
「そういうこと」
これでエックスとイチがリズと親しい理由が判明できた。律儀というか、そこまでする必要があるというか……私には関係ないことだけど、それが私にはない人と人との関係性なのでしょうね。
「それで……ですね。もう、お昼なのですよ……ドウセツさん」
「そうね」
「その……あの……その……」
急にイチはもじもじと両人差し指を上下に擦り、なにか口に出すのを躊躇い始めた。急におかしくなったのかと思えば、それを取り払うように発した。
「私達のギルドへ来ませんか!」
「嫌よ」
「はぅ」
イチは私が断ったせいで涙目になり、怯えてしまった。だいたい察していたけど、やっぱりそういうお誘いだったのね。そうじゃなければ、私なんか放って置けばいいもの。誘う前に断っても良かったけど、それは人による。ちゃんと最後まで訊いて即決に断った。
「おい、てめえ!! イチが誘っているのに断るのかよ! 頭おかしんじゃねぇのか!」
「貴女に一番言われたくないんだけど」
「なんだど!」
「抑えて抑えて!」
エックスは当然のようにキレ始め、殴りかかろうとするけどイチに止められてしまう。
誘いを断ったって……言われてもね、私なんかが言っても場の空気を悪くするだけで、誰にも得にはならないと思う。誰かに対して、冷たくて強いイメージを脳に埋め込ませるような態度を取らないと保てられない。弱い私を見せるのはやっぱり抵抗がある。今はキリカとイリーナさん以外は見られたくない。
「す、すみません、ドウセツさん。出しゃばってしまいまして。また会いましょう」
イチはエックスを抑えながら謝った。エックスがお前が謝る必要はねぇと怒鳴るように励ましていた。
……今まで、私のこと怖がっていたのにもかかわらず、自分から誘うことなんてやろうともしなかった。
…………。
……本当にいいの?
「……気が変わった」
「ふぇ?」
こういうのはあんまり変な風に考えない方がいいし、気を使う必要はない。それを承知で言っているイチのせいにしよう。それに誘いを拒む理由がない。うるさいのがいるけど、問題はないわ。
「だから案内してくれないかしら? 貴女達のギルドハウスへ」
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