SAO編
episode4 祭りの終焉
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「きたぞっ!!!」
「ええっ!? もう来たの!? みんな出店にいっちゃったままだよ!?」
「接戦だ! 二人ともはええ!!!」
「いや、シドがほんのわずかに速い!!! だが最後まで分からねえぞ!!!」
「マジか!?まだ十五分も経ってねえぞ!!!」
街の主街区をくぐった時は、俺の方がほんのわずかにリードしていた。だが、キリトがまた筋力補正を生かして一気に跳躍して屋根に飛び乗る。行きがけのタイムから逆算して考えて、どっちが勝つか正直微妙なラインだ。
「やべっ、もう来たぞ! 道開けろ!」
「えっ、きゃっ!?」
「うおっ!?」
流石にこの時間に来るとは思っていなかったのか、ルート上に居る数人を『軽業』のスキルで巧みにかわしながら更に加速する。隠し玉なのであまり人前で披露したくはない技だが、ここまできたらそんなことにかまってられない。最優先事項は勝利! 全力疾走あるのみだ!
「おーっ! きたきたっ! 頑張って、シドっ!」
「……ごーごー」
「キリトさんはまだ屋根通って無いッス! いけるッスよ!」
途中、聞きなれた声援を聞く。言うまでも無く『冒険合奏団』の三人だ。いや、嬉しいが、お前らなんで先に帰ってんだよ。馬鹿高い転移結晶をこんなとこで使っていいのかよ、しかも三個も。と、今にして思えば突っ込みどころ満載だが、この時はそんなことを考える余裕はない。
声援を糧に更に加速、一定の敏捷値で使用可能となる、装備重量が一定以下の場合のみ使用可能な『軽業』スキル、《ウォール・ダッシュ》でNPCの家の壁を蹴っての全速力のクイックカーブを決める。
「うっし!!!」
更にもう一度、歓声を上げる観衆に壁蹴り跳躍を惜しげもなく披露してダッシュ。拍手喝采は悪くは無いが、今はそんなものよりも勝利を、勝利を! 石畳みを削り取らんばかりのドリフト走行で最後の角を曲がる。顔を上げた先、キリトの姿は、まだない! よし、行ける! 勝てる、いや、勝った!
俺が限界を振り絞り過ぎて煙を上げているように錯覚する神経回路に鞭打って最後のダッシュをかけ、勝利の証であるゴールのドアに向かって手を伸ばす。
その瞬間、世界がスローモーションになった。
「うおおおおおおっ!!!!!!」
後ろの屋根からの渾身の大ジャンプをしたキリトの絶叫が響き。
「ぎゃあああああっ!!!!!!」
咄嗟に振り向いた俺が悲鳴を上げ。
突っ込んできたキリトの体に巻き込まれ、二人がもつれ。
その勢いのまま、エギルが開けてくれていたNPCショップの扉へと転がりこんだ。
結果。三十分でクリアのこのクエストを俺は、俺達は十五分を切るという前人未到、空前絶後のタイムを記録してクリアしたのだった。
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