第一幕その七
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第一幕その七
「君達二人だけで」
「有り難う。では」
「ええ、わかりました」
マノンはデ=グリューの言葉に応える。
「では」
「ええ。行きましょう」
その小さな手を取る。そのまま店を出て馬車に向かうのであった。彼等はジェロントから離れた。二人で手を取り合って二人で旅立つのであった。
「ちょっと待って」
ここでエドモンドが二人に言ってきた。
「どうしたんだい?」
「そのままで言ったら見つかるよ」
「あっ」
「そうだわ。このドレスじゃ」
「大丈夫だよ」
若者達が二人に声をかけてきた。
「ほら」
「こうすれば」
娘達のうちの何人かもやって来ていた。二人にあれこれと被せて隠していく。瞬く間に二人は顔も髪型も何もわからなくなってしまった。
「これでいいわ」
「そうね」
娘達は言う。彼女達も会心の笑みを浮かべている。
「さあ、これで大丈夫だ」
「行きな。出陣だよ」
エドモンドと若者達は口々に二人に声をかける。
「二人が離れることになれば」
不意に誰かが笑って冗談めかして述べてきた。
「破滅が待っているかもな」
「そうだね」
デ=グリューは真面目な顔でそれに応えた。
「僕達の愛は永遠だ。決して離れることはない」
「そうさ。君のことはわかっている」
エドモンドも若者達もデ=グリューのことはわかっていた。しかし。
「いいね」
「え、ええ」
何故かマノンの言葉は戸惑いがあった。デ=グリューはマノンとは違う。彼女もまた。そうした違いが二人の運命であった。
二人は店を出て馬車に乗った。華やかな出発であった。
ジェロントは得意満面で店に入ってきた。しかし彼が見たのは娘達に囲まれて上機嫌のレスコーであった。
「おいレスコー君」
ジェロントはむっとした顔でレスコーに声をかけた。
「どうしたのかね」
「いや、どうも」
真っ赤な顔で彼に顔を向けてきた。
「勝ちまくっていまして」
「それはいいとしまして妹さんは?」
「もう戻っている頃じゃ?」
能天気な調子でジェロントに返す。
「まだですか?」
「見当たらないがね」
憮然とした声で彼に言う。
「一体何処なのか」
「何か無責任ではないかね?」
「まあまあ」
「いいか。それでだ」
とりあえずそれ以上言うのを止めて店の中を見回した。すると見せの外で馬車が動く音を聞いた。
「何っ!?」
「おや」
ジェロントとレスコーはその音を聞いて同時に声をあげた。
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