第四十話
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第四十七層《ラーベルク》のマイホームの布団にて、目を開けてゆっくりと起き上がり、縁側で大きく身体を伸ばす。
目覚ましがてら、朝起きた時の習慣となっている――それは、この《アインクラッド》に来ていても変わらない――剣の素振りを始めようと、俺が愛用している日本刀《銀ノ月》とは違った、素振り用とも言えるただ重いだけの日本刀を取り出して素振りを始めた。
ただただ無心となって振り続けると、直に意識も完全に覚醒し始めたため、もう少し本腰を入れて数十分、頃合いかと見繕って素振り用の日本刀をアイテムストレージにしまい、朝飯を用意しようと台所へ向かう。
俺が第四十七層《ラーベルク》にてマイホームとするべく買った家は、一言で言えば純和風の屋敷……古き良き日本の文化が伝わっていそうな、アインクラッドでは珍しい武家屋敷であった……まあ、屋敷というには少々こぢんまりとしているが。
現実世界においても自分の家はそんなようなものなので、むしろあって良かったと心から思っている。
だが、現実世界になくてこちらにはある代え難い物も存在していた。
その一つが、隣の家から聞こえてくる水車の水を引き上げる音であり、不思議と、聞く者を落ち着かせてくるような気がしてくるのだ。
そしてそれは、隣の彼女が今日も変わらず、元気に店を営んでいるということの証明でもある――
「いただきます」
このアインクラッドにおいては、料理スキルを上げておけば現実世界で料理が出来なかろうが、誰でも簡単に作れるようになっている。
特に、俺が作る物なぞ簡素な朝食かダンジョンに籠もるときの携帯食料やお茶程度だ、対したスキルの熟練度も必要ない。
朝食を食べながら隣に置いてある新聞を見ると、大見出しに『血盟騎士団が74層のボス部屋を発見!』という記事が、写真付きでデカデカと載っている。
……俺たちが茅場によってアインクラッドに閉じ込められてから、現実世界の時間で二年が経とうとしている今日この頃。
攻略組は《聖騎士》ヒースクリフなどを中心に徐々に、だが着実にこの浮遊城を登ってきており、今は74層までプレイヤーたちは到達している。
敵は巨大になっていくが、あの《笑う棺桶〈ラフィン・コフィン〉》討伐戦以降は、プレイヤーたちも一丸となっているようで、このままのペースを維持できるのならば、アインクラッドを脱出するのも遠い未来ではないだろう……無論、ペースを維持できたらの話ではあるが。
この傭兵《銀ノ月》ことショウキ――つまり俺はというと……まあ、何もやり方は変わっちゃいない。
フレンドから依頼が来たらその依頼をこなし、攻略組が見向きもしていなかったサブダンジョンに協力して挑んだり、《血盟騎士団》に依頼されてダンジョンの捜索に協力したり――まあ、そんな
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