二十一話〜あるお願い〜
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「うみぃ!?」
「静かにしろ。邦介」
「あ、ああ。すまん蒼也」
驚いた所為でつい大きな声を出してしまったが、蒼也に咎められる。
俺の声が静かなこの場所で響いたため、ここにいる人達も何事だとばかりに冷めた視線をこちらに送ってくる。
それに申し訳ないとばかりに無言で頭を下げて、俺は手に持っている小説「こころ」の読書を再開する。
何を隠そうここは海鳴図書館。図書館でお喋りは勿論、大声を出すのは言語道断なため俺と蒼也の二人は念話で会話していたのだ。
「ど、どうしたんや? いきなり叫ぶなんて変な人やなあ……」
「……」
ごめんって。
そういった意味を込めて、同じテーブルで一緒に本を読んでいた茶髪で、左の前髪にヘアピンをバッテンの形にして着けている少女、現在はこちらを見て少し戸惑っている八神はやてとピンク髪をポニーテールにして、目は少し吊り目気味だが恐い印象というよりも格好いい女性という印象を与える妙齢の女性、現在はこちらを咎めるような目つきで睨んでいるシグナムにももう一度ぺこりと頭を下げた。
何故こんなことになったのかと言うと、それを説明することになるならば少し前から説明しなければいけなくなる。
「図書館?」
「ああ。一緒に図書館に行かないか?」
ある日の土曜日。今日も今日とて学校を休んでまでもジュエルシードを探しているであろう高町達を尻目に俺は未だに帰ってこないリニスに一抹の不安を抱きながらもルナの指導の下、飛行技術の向上に精を出していた。
本来の戦い方ならこちらの飛行魔法はあまり必要ではないのだが、本来の戦い方はこの世界では異質でしか無いため、非常時にしかやらないだろうと思われる。
そして、おおよそ、急旋回や、動きに緩急を入れることが出来るようになったあたりで蒼也からの電話が来た。
―――とうとうホースケにもボッチ卒業がキターーーーーーー!!―――
おい、そんな言葉を叫びながら喜ぶな。地味に傷つくからやめろ。
「別にいいけど、なんでまた急に?」
「いやな、偶には図書館にでも行ってゆっくりしようと思ってな」
「なるほどねえ。まあ、俺も読書は好きだからいいけどさ……なんか機嫌良さそうだな?」
「分かるか?」
「ああ。どうした?」
「高町達に秋山も休みだから最近はかなり気楽に学校で生活出来ているんだ」
弾んだ声が電話越しからでも聞こえてきて、仏頂面の蒼也がニコニコしているのが幻視出来そうな程の声音だった。
そこまでゆっくりしたかったのか……。
ま、まあ気分転換にはいいだろ。
そして待ち合わせ場所を近場の公園に決めて、電話を切った。
今、考えてみると蒼也と二人で遊びに行くのは始めてだ。
俺ら本当に友達していたの
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