第5章 契約
第56話 ハルケギニアの夏休み・宵の口
[2/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ケにそう聞かれる。もっとも、シースルーのチューブトップにニップレスシールのゲルマニア貴族と言う、無国籍のキュルケに言われたくは有りませんが。
尚、少女の目の前に神饌を運び終わった俺と入れ替わりに、下手くそなお箸の使い方では有りますが、これまた日本の神職の衣装に身を包んだコルベール先生が、その少女の口元に俺が準備した神饌を運んで居ます。
「彼女の名前は魃姫」
顔の下半分を覆っていた白い布を外した後、最初に俺とタバサ、そしてキュルケを起動させたシルフの音声結界に因って包む。流石に、これから先の話の内容をコルベール先生に聞かせる訳には行かない可能性も有りますから。
自らが保護した少女が、もしかすると、この日照りを起こしている元凶の可能性が有る、などと言う事を、あの好人物の先生に聞かせる事は問題が有りますからね。
そして、その後にコルベール先生が保護していた少女の正体についての仮説を口にする俺。もっとも、俺自身に確信が有る仮説と言う訳ではないのですが。流石に、向こうの世界で資料や伝承などでは目にした事は有りますが、実際に出会った事の有る神霊の類では有りませんから。
ただ、古代中国の周時代の服装に似た衣装。更に、最近のトリステイン周辺国の異常な高温少雨の状況。少女から感じる人ならざるモノのイメージが火と、乾いた風。魃姫とあの少女を完全にイコールで繋ぐ事が出来なくても、おそらくは日照り神の系統で有る事は間違いないと思います。
まして、俺とタバサがラグドリアン湖で倒したのは、邪龍ニーズホックなどではなく、水の邪神共工に似た存在。
水の気が勝ち過ぎた存在を排除した事に因って、今度は火や乾いた風に関わる存在が人間界に顕われたとしても不思議では有りません。
「彼女が顕われると、その地域には旱魃と、異常な高温が訪れると言われる日照り神の一種。但し、本人に悪意が有る訳では無いので、ある意味、一番厄介なタイプの祟り神と言うべき存在」
更に説明を続ける俺。そう、伝承通りの存在ならば、彼女、魃姫に悪意は存在していないはずです。ただ、其処に存在するだけで高温と旱魃を起こす。民に取っては非常に厄介な神性を持った神様と言う事ですね。
「俄かには信用出来ない内容の話だけど……」
俺の事を胡散臭い宗教家か何かを見るような瞳で見つめるキュルケ。これは、俺の言葉が完全に信用された訳では無いと言う事なのでしょう。まして、ヨーロッパの伝承上に日照りを起こす神様と言う存在はあまり居なかったとも思いますから。
少なくとも、この場で咄嗟に思い出す神性は存在しては居ません。
そして、片やタバサの方は、僅かに眦を上げて俺を見つめた。もっとも、この僅かな違いを理解出来るのは、おそらくこの世界では俺だけでしょうけどね。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ