衛宮切嗣
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う、一夏」
朝食を取っていると、テーブルの向こうに一夏が腰掛けた。割と整った顔に、子供の様な寝癖がアンバランスで何とも言えない柔らかさを出していた。何だかんだ言って、彼が女の子に持て囃されるのも解る気がする。
「よく朝からそんなに入るね」
とりあえず無言で食事をとるのも味気ないので、適当な会話を振ってみる。それに、一夏の情報も拾ってこいと命じられているんだ。形だけは従っておいた方が賢明だろう。まぁ、八割方嘘の情報しか流してないけど。
「いやいや。結構体力使うから、このくらい取らないともたないんだよ」
一夏のトレーには、焼魚、ご飯、味噌汁、ほうれん草のお浸しが乗っていた。それが次々と口の中に入っていく様は圧巻だ。
「て言うか、シャルルが食べなさすぎなんだよ。サンドイッチ一つって、昼まで持たないぞ」
一夏の言葉通り僕の皿に乗ってるのは、サンドイッチ一切れ。中身はトマトとレタスとジョージ店長お奨めの調味料(※無駄に赤いです)。確かに少ないとは思うが、女の敵と戦っているだけだ。無論言える訳がないけど。そんな他愛もない会話をしていると、急に一夏がそわそわし始めた。
「そう言えば、切嗣は一緒じゃないのか?」
ああ、その事か……
「ごめんね。僕も知らないんだ。朝起きたら、もうどこかに行ってた」
そうか、と残念そうに返した。
曰く、最近女の子からひっきりなしにトーナメントのパートナーに誘われるので、切嗣と組んでしまおうとのこと。
「え、でも切嗣は布仏さんと組むつもりだって言ってたよ」
「あ……そうなのか?」
少し残念そうに声を漏らしたので、慌ててフォローを入れる。
「あ、別に切嗣は一夏が嫌いな訳じゃないよ。ただ、実力不足とかそんな理由で……」
「……シャルル。それはフォローじゃなくて止めだ」
う……
「ご、ごめんね」
「い、いや。いいさ……ただ、どっちにしろ切嗣とは会いたいんだけどな」
ん?何か用でも在るのかな。それが顔にでたのか、一夏が先回りして教えてくれた。
「ちょっと聞きたい事があってな」
それだけ言うと、一夏は難しげな顔をして黙ってしまった。
暫し、息苦しい沈黙が流れる。
「だったら、アリーナの方に行ってみる?」
切嗣の事だから、訓練をしているのだろう。それに気付いたのか一夏も賛同の声を挙げた。
そこから、切嗣を探すため僕も一夏もそそくさと食事を終えてアリーナに向かった。ただ、アリーナに向かう途中、一夏は何度もパートナーにならないか色々な女の子に誘われていた。その度に平謝りする一夏を、恐らく呆れがこもりにこもった、生暖かい目で見つめていた事だろう。……一方の僕はラウラと組む事が伝わっていたのか、そんな誘いも無く他人事でいれた。不覚にもこの時だけは、パートナーが決められてしまった不幸に感謝してしまった。
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