第十八話
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」
「すぐに王子を突きだせば取り下げてやらんこともない」
「わたしはここです。この村に軍を差し向けるなどお止めください。そしてトラバント殿下、勅命とはどういうことでしょう?陛下からは後5年や10年ここで過ごされよと申しつけられております」
この村に軍が向けられるのを防ぎたかったのでレイニーとトラバントの会話に俺は我慢しきれず割り込んだ。
トラバントは俺のほうを見てほぅと口にしてからレイニーを睨みつけ
「レンスターの小僧、お前が知らないのも無理はないので教えてやろう、先王は死に、俺がトラキア王国の国王と相成った、ゆえに汝に命ず、その身柄トラキア城で預かると」
「王たるを喧伝するその証拠は」
「この天槍グングニルが語ってくれよう」
その冷たい輝きを放つ槍の穂先は無言の威圧感を俺に与えてきた。
そうか、これがグングニルか……
「それにしても先王の最期は見物でしたなぁ。あの剛毅な男が哀れにも命乞いなど」
「黙れ、マゴーネ!」
「良いではありませんか陛下、レイニーは我々の慰み者にしてから殺し、王子は永久にトラキア城に幽閉されるのですから」
一瞬何が起こったかわからなかった。
レイニーの大剣の一閃でマゴーネと呼ばれた男の首が刎ね飛ばされ、胴体は真っ二つに両断されていた。
レイニーはトラバントの部下の中に切り込むと、振った大剣の軌跡の数だけ死者を生みだした。
まだ、その死の軌跡が及んでいない者は我先にと領主館の入り口のほうへと逃げ散った。
「父上を、弑し奉るとはァァッァァ!」
レイニーの死の斬撃を受け止めることが出来た最初の者はトラバントであった。
「流石は剣に於いてはこの国最強の使い手よ……だが、只の剣士が天槍グングニルを携えしこの我を倒すこと……果たして…叶うかな!」
レイニーが攻め続け、トラバントはそれを避け、受け、時には反撃を試みるが互いに有効な一撃を加えられずにいた。
だが、終始攻め続けたその為か、レイニーのほうが先に息が上がったようで運動量が落ちはじめた。
血しぶきが舞ったのはトラバントの反撃を避け損ねたレイニーの太ももをグングニルが掠めたからだ。
「その足ではもう動けまい、今、楽にしてやるぞ。我が不肖の姉よ」
トラバントが勝利を確信し口元を歪めたその時、そう、その時を俺は狙っていた。
二人が夢中で戦っている間に、俺はトラバントの背後方面へとそろそろと動いていた。
後の世で卑怯者と呼ばれようと
卑劣漢と蔑まれようと
この一撃に全てを懸け、自分の体重ごと全力でトラバントにぶち当たった。
細身の槍であったがためか切っ先三寸ほどを残して折れ、砕けたが俺はトラバントの体に埋まった切っ先の部分に拳を打ち当て、振り抜いた。
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