暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
全てが始まり、終わった場所
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ーメンドクセー、と。本物のノーベルさんが聞いたら怒りそうな言葉だ。

だが、蓮は普通の人間だった。凡才だった。

誰かと話をしようとしても第一声は、ああ、あの《鬼才》の弟か、だった。先生さえも、蓮を一人の人間として見てくれない。

それどころか、蓮の成績が少しでも悪くなると、お前《鬼才》の弟なんだろ?お兄ちゃんに負けずに頑張れよ、だった。

ノーベル賞ばんばん取るような人に、どうやって勝つんだよ。

そう思いながら、蓮は自分と言う人間がどんどん小さくなっていくのを感じていた。兄を恨むつもりはない。兄はただ、持って生まれたものを有効利用しただけだ。

だから、蓮は努力した。何者にも負けないくらい、努力した。

だが、及ばなかった。

凡人は、所詮は凡人。天才の存在する世界のことなど、解るはずもない。

挫折した。堕落した。全てがどうでもよくなった。

それでも周囲は言ってくる。あれがあの《鬼才》の弟だ、と。どこへ行っても、肩書きのように、背後霊のようについて回る。

だから、かもしれない。蓮が、小日向蓮がインターネット世界にどっぷりハマったのは。

誰も、自分のことを知らない世界。

それはまさに、蓮にとっての楽園(ユートピア)だった。自分が小日向相馬の弟ではなく、小日向蓮として存在できる場所。

それはとても心が安らぐ場であった。

だからなのだろうか。兄が買うことになった、このSAOという名の史上初のVRMMORPGに異常な興味をもったのは。

そして、全てが変わってしまった。

あの日、蓮からレンホウへと姿を変え、見知らぬ街、見知らぬ人々の間に降り立ったときの興奮は今でも覚えている。

だがその直後、頭上に降臨した半透明の神によってこの世界の真実の姿が脱出不可能のデスワールドであることを告げられたとき、全てが終わった。

そして、全てが始まった。










感傷を振り払うように頭を一振りすると、レンは手を繋いで横を歩くマイの顔を覗き込んだ。

「マイちゃん、見覚えのある建物とか、ある?」

「うー……」

マイは難しい顔で、広場の周囲に連なる石造りの建築物を眺めていたが、やがて首を振った。

「わかんない……」

「まあ、始まりの街はおそろしく広いからねー」

レンはマイの頭を撫でる。

「あちこち歩いてればそのうち何か思い出すかもね。とりあえず、中央マーケットに行ってみようか」

レンのその結論で、二人は南に見える大通りに向かって歩き始めた。

それにしても──。歩きながら、レンは少々いぶかしい気持ちで改めて広場を見渡した。意外なほど、人が少ない。

始まりの街のゲート広場は、二年前のサーバーオープン時に全
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