第三幕その三
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ン、僕は決めたよ」
彼はマノンに対して言った。毅然とした声で。
「僕は君を失わない。だから」
「待て」
軍曹が前に出て来た彼に声をかけてきた。さっと彼の前に移った。
「何をするつもりだ」
「彼女と一緒に」
マノンを見据えて言う。
「彼女と一緒にいる。それだけです」
「馬鹿を言うんじゃない」
軍曹はそう述べて彼を止める。
「この女はこれから流刑地に送られるんだぞ。それでどうして」
「構いません」
彼はそれでも迷わなかった。
「僕はどうなってもいいです。ですから彼女と一緒に」
軍曹はそれでも彼を行かせようとしない。しかし腰の剣に気付いた。
「待て」
「何か」
「失礼ですが貴方は貴族ですか?」
「一応は騎士です」
そう返した。
「レナート=デ=グリューです」
「騎士殿ですか。ではあらためてお話します」
態度をあらためて来た。貴族は軍では皆将校である。だから軍曹は姿勢をあらためて彼に接してきたのである。しかしその言葉は変わりはしなかった。
「諦めて下さい。宜しいですね」
「どうしてもですか」
「そうです」
彼は毅然として述べる。
「何があっても」
「そこを何とか」
デ=グリューも引かない。一歩前に踏み出してきた。
「お願いします」
「無理です」
それでも軍曹は引かない。
「おわかり下さい」
「おい軍曹さんよ」
軍曹の態度を頑固だと受け取った市民の中の一人が彼に対して言ってきた。
「けちけちするなよ」
「そうだよ、彼は恋人と一緒にいたいんだろ」
「じゃあ許してやれよ」
「しかし」
それでも彼は引かない。軍人としての心が彼にはあった。
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