第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
眠る剣と女王の剣
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たのはシキの話を聞いていたからだろうか、それとも自分が慣れてしまったのかはレイフォンにはわからなかった。
さらに十分ほど動いたレイフォンは、疲労困憊になりながらリンテンスにお辞儀していた。
「ありがとうございました!」
「あぁ、決して鋼糸の練習はするな」
なぜキツく言ったかというと、シキがリンテンスの目を盗んで一人で修行し、右腕の骨まで切り裂いたことがあるからだ。
リンテンスはキツくそういうと振り返らずに王宮へと足を運んだ。
しばらく王宮を歩いていると、トロイアットが片腕を上げながらリンテンスを呼んだ。
「なぁ、旦那。なんであいつ鍛えてんの?」
「……暇つぶしだ」
「二人目の弟子取ろうとしてんの? まぁ、俺もシキを弟子にしたけどあいつ並みに扱えんの?」
「無理だな。多少はできるだろうが、せいぜい子グモ程度だろう」
そうだろうな、とトロイアットは今も訓練しているレイフォンの姿を見てため息をつく。
女ばかりに目が映るトロイアットだが、シキのスポンジ如く自分の技を覚えていくのは教えていて楽しかったし、同時に内心ヒヤヒヤしていた。
「なんであいつ負けたんだろうな」
「弱かったからだ。シキよりもあの小僧の方が勝つ気持ちが強かった、それだけだ」
「うへぇ、旦那は厳しいこって……まぁ、鍛えているのはあの坊ちゃんの暗殺から守っているからだと思ったよ」
「んなことはさせねえよ」
トロイアットの話に割り込んだのは、ルイメイだった。
こちらは若干そわそわしながらレイフォンの訓練姿を見ていて、普段のルイメイを知っている者からすれば少し不気味である。
「おやおや、まさかルイメイのおっさんにこんな一面あるとは思わなかった」
「黙っとけ腰軽。レイフォンにはルシャが世話になっているから仕方なくだ」
顔を赤くしながらそういうので、トロイアットは軽い吐き気を覚えながら目をそらした。リンテンスはあまり気にせずに話を進める。
「今回の事件は単純だ」
「あぁ、むしろよくも天剣が力を貸すことになったもんだ。……知らないってのは不幸だな」
リンテンスは煙草に火をつけながら、紫煙をぼんやりと見る。
トロイアットが手を挙げながら質問した。
「俺たちは何かするのかね」
「なにも」
「マジ? ルイメイのおっさんも?」
「あぁ、ルシャとのアイシャの時間を作ってやれる」
「マジかよ、そいつは重畳だ。女のベッドで寝てればいいなんて、こんなありがたいことはないね、涙が出てくる」
「まったくの同感だ、不本意ながらな」
トロイアットとルイメイは笑い合った。
しかし、リンテンスの言葉で表情を陰らせる。
「悪人にもなれないとはな……ピエロ以下の道化師だ」
意味はわかる、むしろ分からなければおかしいくらいだ。
ミンスの企みは失敗する
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