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鋼殻のレギオス 三人目の赤ん坊になりま……ゑ?
第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
眠る剣と女王の剣
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った頭が働き、シキはレイフォンとの殺し合いを思い出す。
 負けた、そう負けたのだ。だが、勝負がつく直前の記憶がない。ポッカリと失っているのだ。
 とりあえずシキは歩こうと一歩踏み出した。硬い感触が返ってくると思ったのだが、柔らかいゴムのような感触が返ってきた。
 シキは嫌な予感がして、足元を見る。そしてソレを見て凍りつく。
「な、なんだ」
 顔、そう顔があったのだ。
 まるで彫刻に掘られたように無個性の顔がそこにはあった。よく見れば、真っ白だった空間一面に顔がびっしりと埋まっている。
「恐怖しテるナ?」
「ダが、安心シろ」
「オ前も時期ニこうナる」
 何人もの人間が合唱したような奇妙な声だった。
 シキは不安をかき消すために叫ぶ。
「なんだ、お前らは!!」
「取り込ムト言ッただロう?」
「安心シろ。一ツになルだけダ」
 ズブッとシキの足が顔に吸い込まれる。
 それに気づいたシキは剄を使おうとするが、一向に剄が練れないことにパニックを起こす。
「な、なんで剄が」
「無駄ダ、コこではツきの力ハ使エなイ」
「抵抗スるな、小さキ子ヨ」
 ついに胴体まで吸い込まれ、どんどん身体が何かに侵食されるような感触を味わう。
 意識が薄れていき、手に力が入らなくなっていく。
 シキは死を覚悟したが、まさかこんなところで死ぬとは思わなかった。
 いや……
(もうレイフォンに殺されてるのに、死ぬなんておかしいか)
 取り込まれる直前になって、シキは思い出した。
 レイフォンが振り下ろした焔切りに切り裂かれて、痛みのあまり失神したのを。
 レイフォンを恨む気持ちはない。真剣勝負だったのだ。例え、武器のせいで負けたとしてもソレは自分に運がなかったのだということだ。
 リーリンや孤児院の人々、天剣やクラリーベル、自分を殺してしまったレイフォンを残して死ぬことは残念だが、後はレイフォンが上手くやってくれることを信じようとシキは思った。
 悲しいとは思わない、無残なひき肉のような死か、汚染獣に食い殺される、そんな悲惨な死に方をすると思っていた自分が、顔に取り込まれて死ぬという比較的に安らかな死で終わるのだ。
五体満足で死ねるなら、それに越したことはない。例え、得体の知れない者たちに取り込まれるとしてもだ。
「サぁ、一緒ニなろウ」
 最後に、シキは腕を伸ばした。
 誰かに取ってもらいたいわけではないし、やったシキ自身が一番驚いている。
ただ、生き残ることを信条としたサイハーデンの教えが、シキが持つ最後の生存本能を刺激し行動に移した反射だった。
 力いっぱい伸ばした手を……誰かの手が握り締めた。
「なぁにこの程度の奴にやられそうになってんだ。この男女」
 握り締めた誰かはシキを強引に引き上げる。諦めかけていたシキは目を見開
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