第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
眠る剣と女王の剣
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な事故だった。君たちは強大な剄を持ち、それを全力で振るう機会などなかった。全力を知らないで戦うなど、最大の不幸ではないか」
「……」
そう不幸だったのだ。強すぎるという不幸。知らないという不幸。レイフォンとシキが戦ってしまったという不幸。今回、シキがああなったのも不幸な事故だと女王は語った。
「それに……シキはまだ本気を出していない」
「……」
もうレイフォンは驚かなかった。シキの全力までとはいかないが、自身の異常な剄力の遥か上を行く剄力の片鱗を見たのだ。あれが本気なわけがない。
「シキは自分の力を怖がっていた……本人もそう言っていたけどさ、ぶっちゃけシキが優柔不断なだけなんだけどね」
「えっ?」
突然、女王の口調が変わり聞き覚えがある口調となる。
御簾の向こうが騒がしくなり、女王と誰かが言い争っているようだった。やがて騒ぎが収まり御簾が上がっていき、女王の姿をレイフォンに見せつけた。
「さぁ、レイフォン? グチグチ言ってないで顔をあげなさい。今日からあなたは私の剣なんだから。あっ、カナリス離してもいいわよ」
そこに立っていたのは、シキとまったく同じ顔を持つシノーラだった。
そしてシノーラの言葉に無言で従ったカナリスは、レイフォンを開放した。それだけでもシノーラが女王だということを信じざるを得なかった。
「な、なんでシノーラさんが」
「ん? シノーラは偽名なのよ。本当の名前はアルシェイラ・アルモニス、このグレンダンの女王」
レイフォンは眼を何度も瞬かせながら、頭を捻った。シキの知り合いはどうなっているのかと。
「そして見せてあげる。嫌なぐらい最低最悪、もうこれ以上ない凄惨な戦場をね。レイフォン? 怖気づいた?」
レイフォンにはアルシェイラの言葉半分の意味もわからなかったが、自分がとんでもない場所に飛び込んだことだけはわかった。
「さぁ、受け取りなさい。レイフォン・ヴァルフシュテイン・アルセイフ、罪の重さを感じながら戦いなさい」
不敵な笑みを浮かべながら、アルシェイラはレイフォンに天剣を放り投げた。
天井の照明を反射させながらレイフォンの手に収まった天剣は、アルシェイラの言葉通りまるで罪の象徴のようにレイフォンの目に映った。
リーリンは眠気を堪えて、看病していた。
病室のベッドに寝ているのはシキだ。
その様子はまるで精巧に作られた人形のようであった。
あの天剣授受者選定式から一週間、シキは眠り続けていた。そしてこの一週間、リーリンは孤児院に帰っていない。時々、様子を見に来るデルクや天剣たちに世話されながら病院に居座っている。しかし、この一週間レイフォンの姿を見ていない。
王家からの補助金もあり、最高のスタッフと器具を動員してもシキが目覚めることはなかった。
いや、実際はシ
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