第三幕その一
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の間に牢になっている車のところまでやって来た。マノンはそこにいた。
彼女はやけに厳重な一両の車の中にいた。檻の中で悲しい顔をしている。かつての晴れやかな笑顔は何処にもなくみすぼらしい有様で粗末な服を着ていた。化粧もなく髪は乱れその姿はまさに囚人のそれであった。
しかしデ=グリューにはわかった。すぐに彼女に声をかける。
「マノン」
「デ=グリュー?」
俯いていたマノンはその声に気付き顔を上げる。その顔は本当に悲しげなものになっていた。自業自得であるかも知れないがその顔はそれでも悲しいものであった。
「そう、僕だ」
デ=グリューはマノンのいる車のところまで来て答える。
「来たよ」
「本当に来てくれたの」
マノンは夢を見ているかのような声をあげた。
「まさかとは思っていたけれど」
「忘れる筈がない」
デ=グリューは彼女の顔を見てそう返す。
「そして見捨てる筈がないじゃないか」
「有り難う・・・・・・」
マノンはその言葉を聞いて言う。
「私なんかに」
「沈むことはない」
レスコーもやって来て声をかける。
「もうすぐなのだから」
「お兄様」
「もうすぐだ」
レスコーがここで言った。
「仲間達と一緒に。そうすれば御前は」
「デ=グリューと一緒に」
「そうだ、一緒になれる」
兄は答える。
「だから。もう少しだ」
「ええ、わかったわ」
マノンは力なくその言葉に頷いた。
「それじゃあ」
「ではデ=グリュー」
レスコーはデ=グリューに声をかけた。
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