23話「グランドウルフ戦 (2)」
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「囮ですって!? アッシュを!!?」
凄まじい剣幕でユーゼリアはガークに詰め寄った。彼女の豹変ぶりにガークはたじたじになりつつも言う。
「お、囮じゃねえって。“足止め”――」
「同じことでしょう!?」
「悪かった。悪かったってば。だがな、ランクC以上と言ったのはそっちだぜ? グランドウルフは確かにBクラスだが、魔物だし、その上“倒せ”っつってるワケじゃねェんだ。逃げ回るくらいなら、Cランカーでもできる」
「うっ」
その言葉に思い当たる節があったのか、押し黙るユーゼリア。やれやれとガークは溜め息をつき、そして言った。
「それに、俺の勘だが、あいつは死なねェな。さっきも奴ァ言ってたぜ。“死ぬつもりは無い”ってな」
「死ぬ、つもりは…」
それは昨日、ゴブリンとコボルトの巣を殲滅するときに言っていたこと。
そのことを思い出すと、不意に大丈夫だと思えてきた。
(そうね。きっと心配するだけ損するわ。だってアッシュだもの。ケロッといつも通りの余裕の顔で…もしかしたらグランドウルフを倒しちゃったりして。それは無いかしら。でもアッシュだもの、ありえるわ)
一体ユーゼリアの中でアシュレイはどういう評価をされているのか、やがて白くなっていた頬に赤みが戻り、微笑が戻った。
「頑張らなくちゃ!」
******
「警備兵はグレイハウンドの掃討を手伝ってくれ! グランドウルフはこっちの腕利きがやる!」
「わかった!」「頼む!」
周りの警備兵達が返事をするとほぼ同時に、Vの字になったウルフ達が突っ込んでくる。
「アシュレイ! 10分だ! 10分持ちこたえろ!」
「わかった」
事前に拾っていた握り拳大の石を、鋭くグランドウルフの赤い目に投げる。寸前で瞼を閉じられ、ウルフに傷を負わすことは出来なかったが、それで良い。
今回のアシュレイの役目は、グランドウルフを足止めすることなのだから。
「グワアアア!」
進行の邪魔をされたウルフが咆哮する。その憎悪の眼差しは、足元にいる小さな人間に注がれる。
(どうやら俺が魔のモノだとは気づいていないな)
腰の剣を抜こうとして、思い留まる。
アシュレイのこの長剣は特別製だ。たかが力を抑えた程度で同族に気づかないような小者など、真っ二つなのである。むしろ、斬れないように剣を振るう方が難しかった。
「やれやれ」
空から落ちてくる脚の動きを先読みし、避ける。少しは必死さを醸し出したほうが良いだろうかと考えるが、服が汚れるのも嫌なので却下した。
その大きな前脚でもってアシュレイを叩き潰そうとする
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ