第二幕その六
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第二幕その六
「ジェロント卿がこちらに向かっている。警官を大勢引き連れてな」
「やはり」
デ=グリューはそれを聞いて言った。
「じゃあ」
「裏口から逃げるんだ」
レスコーは二人に対して叫んだ。
「早く。一旦逃げれば後は知らぬ存ぜぬで通せる。ジェロント卿もそこまでは考えていない。けれど捕まったら」
「そうだ、だから」
デ=グリューはマノンにまた言う。
「早く逃げよう」
「待って、もう少し」
「おい、捕まったら終わりなんだぞ」
レスコーも妹に対して言った。
「それなのに御前は」
「そうだ、だからマノン」
「だからもう少し」
「もうそこまで来ているのに」
レスコーも必死である。
「まだ御前はわからないのか」
「じゃあ手伝って」
やはりマノンはわかっていなかった。
「こっちだって急いでいるのよ」
「そんなものは後でどうにでもなる」
兄はまた言った。
「けれど捕まったら」
「そうだマノン、僕もレスコーもお金なら幾らでも作られる」
博打で、というわけである。実際に二人はそれで生きているといっても過言ではなくなっている。デ=グリューもかつての彼ではなくなっていた。
「だから早く」
「けれどこれは」
それでもマノンは聞き入れない。まだ宝石箱を出している。
「これだって」
サファイアにダイア。まだまだあった。
「それにこれも」
そしてルビー。珊瑚も真珠もある。
「これだって」
「ほら、もう窓に見えてきた」
レスコーが窓を見て言う。
「今しかないんだ、早く」
「マノン!」
「わかったわ」
宝石箱を全部持ってからようやく応えてきた。
「じゃあ今から」
「馬鹿!」
扉から行こうとする妹を叱った。
「もうそこからじゃ無理だ、こっちだ」
「そっち?」
「そうだ、裏口からだと言っただろう」
兄は焦る顔で妹に語る。
「早くするんだ、だから」
「え、ええ」
レスコーは妹を奥に行かせてその間に部屋の扉に鍵をかける。といってもこれは気休めにしかならない。それは彼もわかっている。
「早く!」
レスコーは扉の向こうの大勢の足音を聞いていた。それを聞いて青ざめる。
マノンはまだあたふたとしている。今鍵が開く音が聞こえてきた。終わったと思った。
「駄目だ・・・・・・」
扉が開けられた。そこにはジェロントが大勢の警官を連れて立っていた。ジェロントは呆気に取られその場に崩れ落ちてしまったマノンを見て言ってきた。
「まさかな」
彼はそのヘ垂れ込むマノンを見て呟くようにして言うのであった。
「まだ残っていたとはな。だがいい」
「あああ・・・・・・」
「捕らえてくれ」
「わかりました」
警官達が彼に頷く。そしてマノンの左右にやって来た。
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