SAO編
episode3 乱戦、混戦、総力戦3
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アスナは、必死だった。
相手を攻めることに集中するあまりに周囲へ耐毒ポーションを飲む指示を出すのを怠った。それはアスナだけのせいではもちろん無いのだが、彼女の責任感と焦燥感がそれに拍車をかけていた。その瞳に強すぎる意思の炎を燃やし、剣を振い続ける。
結果、彼女はたった一人でボスの攻撃を引き受けていた。
まさに神業と言えるだろう。
だが、周囲から降り注ぐ毒液の雨。繰り出される四本の棘のついた蔓の鞭。蜂たちこそシドが一手に引き受けてくれているものの、それでも長くは持たないのは明白だ。既にアスナの耐毒効果も切れている。一撃でも毒液の直撃を喰らえば。
喰らってしまえば。
「ッ!!!」
恐怖が一瞬だけ体をよぎった所為で、背後からの毒液をまともに食らってしまった。HPバーが一割の半分ほど減って、その横にステータス異常が表示される。『麻痺』。
「あっ……っ!」
この状況下では最悪のステータス異常に、アスナの体から、急速に力が抜けていく。そのままがっくりと膝をつき、前のめりに倒れ…
「あっ、ああああっ!!?」
る前に、鋭い棘が無数に生えた蔓がアスナを締めあげた。蔦の腕を持つ植物モンスターがよく使う、こちらを拘束するタイプの攻撃。その効果は、対象を縛りあげることで継続したダメージを与えるというものだが、発動の隙が大きい上に相当にレベル差が無いと成功しないという本来アスナのレベルなら十分回避できる、恐るるに足りない技。
しかしそんな欠点も、麻痺状態の相手には関係ない。
「くっ、ああああっ!!!」
蔓が締めあげられるたびにアスナのHPバーが減少していく。成功率が低いだけにその威力はアスナの想像以上のもので、HPゲージがイエローを割り込み、赤の危険域へと突入し、
(し、死ぬ…? 私、ここで、死ぬの…?)
アスナがぎりぎりに迫った死の恐怖に、眩暈に似た意識の濁りを自覚した瞬間、
「アスナあああッ!!!」
一人の男の叫びが、彼女の耳に響いた。
◆
無我夢中だった。
四隅の一角に生えたモンスターを切り殺して振り返った瞬間、二本の蔦で締め上げられ、高々と掲げらるアスナの姿が目に映った。なんの偶然か、虚ろになったその視線が、見上げる俺の視線と交錯する。
俺を見つめる視線。
アスナのその視線が、俺の記憶の中の、最も痛みを発する部分を掻き乱す。
―――痛々しい程の信頼の視線。俺に向けて伸ばされる手。
―――そして、爆散するポリゴン片。
途端、世界が真っ赤に染まったように意識がスパークした。
「アスナあああッ!!!」
狂ったように叫びながら、剣を構えて走り出す。数歩も行かないうち敏捷値
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