第二幕その五
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第二幕その五
「マノン、やっぱり僕は」
「私も」
二人は抱き合ったまま言い合う。
「君なしではいられない。だから」
「ええ。私も」
「こうして何時までも一緒に」
「貴方に口付けを」
「また僕にキスをしてくれるのかい?」
デ=グリューはその言葉に問うた。
「昔のように」
「はい、今も昔も」
マノンはそれに応えて言う。
「これからも。ずっと」
「僕は永遠に君のものだ」
その言葉を聞いて思わず言った。
「だから君もまた」
「ええ。私は貴方のもの」
マノンもそれに応える。
「ですから」
そのまま唇を合わせる。深い口付けであった。それが終わった時扉が開いてジェロントが部屋にやって来た。
「幾ら何でもそれはないのではないのかね」
彼は部屋に入るとそう言ってマノンを咎めてきた。
「私もわかっている。パトロンはどんなものかは」
愛人は複数いるのが当然であった。この時代の貴族にとって結婚はビジネスでしかなかった。不倫は当たり前であった。ルイ十四世もルイ十五世も生涯に多くの愛人を持っていた。マリー=アントワネットは男女関係に事の他厳格なマリア=テレジアを母に持っておりフランスの宮廷に入った時国王に堂々と愛人がいたので激怒した程だ。なおこの愛人はルイ十五世の最後の寵妃であるでュ=バリー伯爵夫人である。奇しくも彼女の最期はマリー=アントワネットと同じく断頭台でということになってしまっている。
だからジェロントはそれには怒ってはいない。問題はだ。
「よりによってここで。しかも」
自分が捨てたデ=グリューと自分が用意した部屋で。流石にこれは気分を害するに値するものであった。
「これはないのではないのかね」
「あら。でしたか」
マノンは勝気な様子でこれに返してきた。
「気にされなかったらいいではありませんか」
「よくそんなことが言えるものだ」
その言葉がかえってジェロントを怒らせた。
「私に対して」
「私が愛しているのはデ=グリュー」
「それもいいでしょう」
それもまだ彼の許容範囲であった。愛人だからまあよいとしているのだ。浮気は。
「しかし。ここでそれをされるとはね」
「ではどうされるのですか?」
マノンは余裕に満ちた顔で彼に対してまた言い返した。
「貴方は」
「退散するとしよう」
まずは引き下がることにした。しかしだ。
「しかしまた会った時は」
「また会った時は」
「少なくともここでは会わないことを祈ろう。では」
そのまま姿を消した。デ=グリューは彼が何故部屋を去ったのかわかっていた。だからすぐにマノンに顔を向けて言うのであった。
「すぐにここを去ろう」
「どうして?」
「わからないのかい?彼は警官を呼びに行ったんだ」
「警官を」
「そうだ。
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