第二幕その三
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第二幕その三
「やあマノン」
レスコーはにこやかに笑ってマノンのところにやって来た。そして声をかける。
「元気そうだね」
「ええ。元気なことは元気だけれど」
けだるい声で彼に応える。
「それでもね」
「まあまあ」
そんな彼女を宥める。
「踊りのレッスンの時間だよ」
「今日は脚が痛くて」
「ふむ、それなら」
ジェロントはそれを聞いて目をしばたかせた。そのうえで隣にいる口煩そうな者達に対して述べるのであった。
「ではあれを」
「はい」
彼等はそれに応えると一冊の分厚い本を出してきた。ジェロントはそれを受け取るとそれをマノンの前に差し出してきた。マノンはその本を見て問う。
「何ですの、これは」
「メヌエットに関する本だ。たまには読んでみるといい」
ジェロントはそう述べる。
「踊りって身に着けるだけじゃないの」
「身体で覚えるの半分しかわかったことになりません」
口煩そうな者達のうちの一人が答えてきた。彼は舞踏の教師である。この時代のフランスの芸術は何事も異様なまでに細分化、複雑化、儀式化しておりメヌエットにもこうした辞書のような本が出ていたのである。この辺り、いやルイ十四世の頃からフランス人というものはやけに物々しく自分達を芸術の中心のように考えるようになっていたのである。なおルネサンスの時は単なる田舎者であった。
「頭でも覚えてこそ完璧なのです」
「こんな分厚い本を」
「私はその本の隅から隅まで暗唱できますが」
「いや、それは中々」
そのフランス文化に染まっているジェロントはその話を感心して聞いていた。
「見事だ。やはりフランスはこうではなくてはな」
「はい。私達はイギリスやオーストリアとは違うのです」
どちらもフランスの宿敵だ。敵に困ったことのない国でもある。
「いいね、マノン」
ジェロントはあらためて彼女に言う。
「それを全部読んでおくんだ」
「ええ」
答えはしたが内心かなりうんざりしていた。
「わかったわ」
「それをお渡しすれば今日は何も」
「左様ですか。それでは」
「はい」
教師達は去った。そして後はジェロントだけになった。彼は誇らしげな顔でマノンに対して言うのであった。
「その本は貴重なのだよ」
「メヌエットって踊るだけじゃなかったの」
「何を、随分と奥が深いのだよ」
奥が深いのは事実だ。掘り下げたのはフランス人だ。
「その本だけではないしな」
「他にもあるの?まさか」
「いや、メヌエットはそれだけだ」
「そうなの」
それをきいてほっとしたがそれは一瞬でしかなかった。ジェラントはさらにとんでもないことを述べてきた。
「それぞれの踊りについて書かれている」
「えっ」
マノンはそれを聞いて顔を変えた。
「それって本
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