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マノン=レスコー
第二幕その二
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第二幕その二

「そうしたらな。彼は泣いていたよ」
「泣いていたの」
「ああ、修道院の前でな。彼は元々神に仕えようとしていたから」
「そうだったの」
 マノンはそれを聞いてまた俯いてしまった。
「私のことを想って」
「御前のことしか考えていない。修道院に入るのを止めてそれからも何度か会った」
 兄はさらに語る。
「マノンのことだけを考えている、他の女性には目もくれようとはしない。あんなに一途な男はいないな」
「そうよね。けれどあの人はもう」
「いや、彼は今必死になっている」
「どういうこと?」
「俺が遊んでばかりなのにどうしてお金に困っていないと思う?」
 ここで彼は思わせぶりに妹に語ってきた。
「それはわかると思うけれどな」
「ギャンブルでしょ」
 マノンは一言そう述べた。
「兄さんは昔から運と勝負事は凄かったから」
「そういうことさ。彼にそれを今教えている」
 レスコーの目が光った。
「それでさ。彼は今それでお金を作っているんだ。じきに大金持ちになるかもな」
「お金を」
「御前の為にな。今必死になっている」
「あの人がそうやって」
「そうだ、御前の為にだ」
 その言葉を繰り返した。
「わかったな」
「ええ」
 兄の言葉に頷く。
「裏切った私の為にそこまで」
「彼は勝つ」
 レスコーは断言してきた。
「何があってもな」
「何があっても」
「ああ、だから安心しろ」
 妹をまた見据えてきた。
「彼に関してはな」
「わかったわ」
 マノンは兄の言葉に頷いた。そこに急に物々しい一団が部屋に入って来た。レスコーは彼等の姿を認めてマノンに問うてきた。
「この人達は?」
「歌手の人達を。私に曲を提供してくれるの」
「そうなのか」
「ええ。中々いいから聴く?」
「そうだな。音楽は嫌いじゃないし」
 むしろ結構好きな方だった。だから受けることにした。
「じゃあ一緒に」
「ええ」
 レスコーは妹と共に曲を聴くことにした。はじまる前にマノンが言ってきた。
「この曲はね」
「どうしたんだい?」
「ジェロントさんが作詞と作曲をしたの」
「あの人がかい?」
「ええ。あれで結構音楽が好きらしいのよ」
「そうだったのか」 
 ジェロントは彼の意外な趣味を聞いて内心少し戸惑いを覚えた。
「人は見掛けによらないっていうか」
「そうね。ほら、はじまったわ」
 演奏と共に曲がはじまった。それはマドリンガルであった。
「君が流離う山頂に僕は行き、そして君の花の如き唇と泉のような瞳を見つけ出す」
「ふむ」
 レスコーはそこまで聞いてまずは呟いた。
「悪くはないかな」
「そうでしょ?まだあるわよ」
「風に乱れる君の髪のいみじき美しさと百合のような白い胸元。僕は風笛と共に
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