第二十六話 嵐近付く
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な角度から分析しなければ考察できない。十年遅れている、そう言って嘆いてましたよ……」
ミュラーが溜息交じりに言葉を吐く。
「黒姫は十年間、それをやってきたという事か……、士官候補生と言えば奴はまだ十代の前半だろう」
「十年やってもそこに辿り着くかな、フェザーンと地球教が繋がっていると……。化け物だな」
ロイエンタール、ミッターマイヤーが信じられないと言うように首を振っている。
「嘆きたいのはこちらも同じだ。今日は用兵家としても向こうの方が上だと思い知らされたよ。政戦両略で優位に立ち反乱軍を動けなくする事でヤン・ウェンリーを無害化するか……。戦わずして勝つ、最上の勝ち方だな、見事なものだ。彼の頭の中では宇宙はもう統一されているのだろう……」
メックリンガー提督がグラスを一口呷った。苦そうな表情をしている。
「黒姫は一体フェザーンに何をしに行ったと思う? 自由裁量権を得て何をするつもりかな」
ビッテンフェルトの言葉に皆が視線を交わした。
「考えられる事はルビンスキーの身柄の確保だな……」
「それと航路情報か……」
ロイエンタール、ミッターマイヤーの言葉に皆が頷いている。唯一人ビッテンフェルトだけが首を傾げた。
「上手く行くと思うか?」
「……」
「それにそれだけかな?」
「……」
皆、顔を見合わせたが誰も口を開かなかった……。
帝国暦 489年 6月26日 オーディン 国家安全保障庁 ギュンター・キスリング
ローエングラム元帥府から戻ってきたアントンは疲れた精彩の無い表情をしていた。
「どうだった、ローエングラム公は」
「当然だが激怒していたさ。エーリッヒの警告を無駄にしたんだからな。面目丸つぶれ、そんなところだ」
「そうか」
思わず溜息が出た。アントンも釣られたように溜息を吐いている。国家安全保障庁のトップ二人が溜息を吐いているのだ、状況は良くない。
「唯一の救いは怒られたのが俺だけじゃないって事だな」
「オーベルシュタイン中将か」
「ああ、最近では妙に中将に親近感が湧くよ。出来の悪い生徒ってのは先生に一緒に怒られて仲が良くなるらしい」
今度は自嘲が入っている。もっともここ半月、我々にとって良いニュースなど一件も無かった、憲兵隊にもだ。アントンの気持ちが分からないでもない。
地球討伐に向かったワーレン提督が旗艦サラマンドルで暴漢に襲われた。どうやら相手は兵士に化けた地球教徒だったらしい。ワーレン提督は左腕をナイフで刺されたがナイフからは毒が検出されたため止むを得ず左腕を切断、今現在ワーレン提督は昏睡状態にあると艦隊からローエングラム公に報告が有った。それを受けてローエングラム公は配下の艦隊全てに警告を出している。フェザーン侵攻中のロイエンタール、ミッタ
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