第百十五話 大谷吉継その十
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「これからもしていく。ただしじゃ」
「慢心はしませんね」
「天狗になっては終わりよ」
信長はそれはないと笑って述べた。
「政も戦もな」
「そのどちらもですね」
「わしは天狗ではない。天狗の顔は赤いが」
「織田家は青ですから」
「顔の青い天狗はおらぬな」
「聞いたことがありませぬ」
「鬼は青いのもおるが天狗にはおらぬ」
青鬼はいるが青天狗はいないというのだ。天狗の顔は赤い、織田家の青はないのだ。
だから信長はその色も交えて言うのだった。
「わしは蛟龍よ」
「尾張の蛟龍ですね」
「蛟は赤くはない」
天狗とは正反対に、であった。
「青いものじゃ。わしは天狗にはならぬ」
「蛟からですね」
「天に昇り龍になる」
「是非なられて下さい。では」
帰蝶は信長にあるものを差し出した。それは何かというと。
饅頭だった。それを信長にそっと一個差し出して言ったのである。
「どうぞ」
「おお、饅頭か」
「中に小豆が入っています」
「よいのう、ではじゃ」
「召し上がられますか」
「無論じゃ。酒は駄目じゃがこれは幾らでもよい」
言いながらその饅頭を笑顔ェ受け取る、そしてだった。
信長はその饅頭を口の中に入れ笑顔でこう言った。
「やはり美味いのう」
「まことに甘いものがお好きですね」
「うむ。しかし塩や醤油も好きじゃからな」
「そちらも作られますか」
「播磨の方で塩を作ってみるか」
信長は少し遠い目になってこんなことも考えた。
「あそこはよさそうじゃ」
「塩は播磨ですか」
「他の国でも。海があれば作られるがな」
「塩は欠かせませんね」
「それに醤油、酢だの味醂だのも作らせていこう」
考えることは尽きない、信長はただ米のことだけを考えているのではなかった。
そうしたものも見てそして言うのだった。
「さて、まことにやることが多いのう」
「国を豊かにする為には」
「天下を治めるにあたってすることは多い」
信長はこのことも実感していた。
「面白いことじゃ。さて、また茶を飲めば」
「次は馬ですね」
「少し乗って来る。馬はよい」
「では私もお供を」
「ははは、帰蝶は相変わらず馬も好きじゃのう」
「殿の妻ですので」
笑顔で返す帰蝶だった。信長は天下第一の家の主となってからも妻との絆は強いままだった、そのうえで幸せを感じていた。
だがその信長を見て松永は大和の信貴山城についてこう己の家臣達に述べた。
「いや、惚れるわ」
「殿、織田信長に惚れるのは」
すぐに家臣の一人が言ってきた。
「危ういことですが」
「わかっておる、それは言われておるな」
「はい、ですから」
「わしとて一族、それはな」
松永は笑ってその家臣に述べる。だが、だった。
彼はここでこ
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