第百十五話 大谷吉継その九
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「殿を」
「御主はいつもわしを見ていてくれるのう」
「殿の妻です」
だからだというのだ。
「妻は夫の傍にいつもいるものですから」
「地獄でもか」
「地獄も殿と一緒なら」
「怖くはないか」
「恐れることはありませぬ」
そうだというのだ。
「ですからこれからも共に」
「わかった。ではじゃ」
「はい、それでは」
「共に行こうぞ」
「何処までも」
笑顔で言葉を交えさせる。そのうえで。
信長は茶を飲みそれでこんなことも言った。
「こうして茶を飲めば自然と甘いものが欲しくなるのう」
「そういえば近頃水飴も安くなりましたね」
「よいことじゃ。それに餡子を使った菓子も増えた」
「どれも殿の好物ですね」
「甘いものは好きじゃ」
果物でも柿や蜜柑、枇杷が好きだ。他には葡萄や梨もだ、とかく信長は甘いものには目のない男なのだ。
それで近江から贈られてきた砂糖についても言う。
「あれの甘さもよいのう」
「砂糖もですか」
「狂言であったがな。あれは面白い」
「それは私も観たことがありますが」
「甘いがしかし高い」
砂糖は海の外でしか手に入らないものだ、それで非常に高価なのだ。
だがその高価なものもだとここで言う信長だった。
「それをどうにかしたいのう」
「今後はですか」
「甘いものももっと増やしたい、わしだけ食ってもつまらぬ」
「皆で食してこそですね」
「西瓜もよい」
信長はこれもかなり好きだ。夏はいつも食べている。
「あれもより大々的に植えさせて皆で食いたいものじゃな」
「とにかく甘いものもですか」
「茶は前から言って茶畑をどんどん作らせておる」
そしてそれが大きな商いにもなろうとしている。
「田の開墾と同じだけな」
「茶もですか」
「紙も作らせ木綿もじゃな」
そこに茶もだというのだ。
「とにかく色々作らせておる中でもな」
「茶を特にですか」
「そして売らせる。百姓共を儲けさせるつもりじゃ」
「年貢を安くしてますがそれに加えて」
「豊かなら食うのに困って逃げたり一揆をしたりせぬ」
これが信長の発想だ。彼はこの発想に基き政を行い領内の百姓に町人達を豊かにさせている、年貢にしろ税にしろ安くしてだ。
この政について信長は確かな声で帰蝶に話す。
「武器は取り上げておるしな」
「刀狩りも進めていますね」
これは兵農分離と共にしている、百姓達の持っている刀や弓矢を取り上げその代わりに鍬や鋤を与えている。
そうして思う存分農業に精を出させているのだ、これが信長の政である。
「税も軽いですし」
「実は税は重くなくともよい」
「それでも構いませんね」
「米に銭が回れば国が豊かになりその分こちらにも入る」
だから税は軽くしていいというのだ。
「大事な
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