第百十五話 大谷吉継その七
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「鉄砲や火薬をよく使う厄介な者達じゃ」
「それが雑賀衆ですか」
「そうじゃ。実に厄介な者達じゃ」
「その雑賀衆とも戦いたくはありませんか」
「忍の者は厄介じゃ」
戦をするにしてもだ。
「ただでさえあの門徒共とはやり合いたくはないのだからのう」
「本願寺とは実際に戦になりますか」
「今は何ともないがな」
とりあえず双方の間に今は衝突はない。それどころか本願寺は織田家に矢銭を贈った程である、それを思うと仲はいいとも言える。
だがそれは今の時点でありこれからはだというのだ。
「しかしこれから検地を進めれば」
「その時はですか」
「あの寺も多くの荘園を持っておる」
そもそも加賀一国と各地に多くの寺があるのだ。寺には土地と門徒達がそれぞれいるものだ。
だからこそ信長も言うのだ。
「検地を進めていけばわからぬ」
「ですか」
「戦は避けるがやらねばならぬ時は」
「戦をされますか」
「そうする。やらねばならぬ時はやる」
信長の考えは変わらない。そしてだった。
この考えから信長はこうも述べた。
「延暦寺や金剛峰寺にしてもじゃ」
「伝教大師と弘法大師の」
「うむ、やらねばならぬならな」
帰蝶にも意を決している顔を見せていた。
「わしは戦をするぞ」
「どちらも都を護る寺ですが」
「延暦寺は鬼門、金剛峰寺は裏鬼門ですね」
それぞれ東北、南西の方角だ。
「その二つの方角を護り鬼を防いでいますね」
「それじゃ。しかし」
「しかしとは」
「その二つの寺が鬼を防ぐことを止めればどうなる」
信長の顔が怪訝なものになる。
「その時はどうなる」
「鬼が自由に出入りします」
こうなることは言うまでもない、帰蝶ならずともわかることだ。
「そして都は天下の心の臓ですから」
「そこが病めば国自体が病むのう」
「そうなりますね」
「双方共腐りがある」
腐りと言った信長の顔に嫌悪が宿る。
「それが問題じゃ」
「腐りですか」
「そうじゃ、延暦寺の僧兵も金剛峰寺の聖もな」
どちらもそれぞれの寺を象徴するものだ。特に延暦寺の僧兵達は平安の頃から何かと知られている者達だ。
「乱暴増席を働き寺の奥の坊主達も仏法を忘れておる。いや」
「いや、とは」
「まさかとは思うが」
これは信長が察していることだ。
「そもそも仏法なぞ持ってはおらぬ坊主もおるのではないか」
「延暦寺と金剛峰寺にですか」
「どんな坊主でも多少は仏法を持っておる」
微かにでもだというのだ。それを持っているとだ。
「しかし最初からじゃ」
「まさか。あの二つの寺が幾ら腐っていても」
「そうした坊主はおらぬというのじゃな」
「妖僧ではないでしょうか」
帰蝶は怪訝な顔で異形の僧侶達に言及した。
「それは」
「
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