巫哉
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白髪と言ったが、ヒトのそれとは明らかに違うはずである。
「みこやのこと、ひべにすきだよ」
「はァ!?」
怖くないかと聞いたのに、何故好きだなんて発言になるのか。つくづくヒベニの思考回路にはついていけないと『彼』は思った。
大体、すきとは。会って間もないこんな怪しいモノを信用するなんて、よくこの歳になるまで生きていられたものだ。
「だから、こわくなんて、ないよ」
ヒベニが少し間をおいて言ったその言葉に、『彼』は虚を突かれた。
すき、だからこわくない?
「てめぇ、バカだな」
『彼』は憎まれ口をたたいたが、何故だか動揺していた。
好きだから、怖くない。
その言葉は、『彼』の心に小石のように沈んでいった。
日紅がだんだん大きくなって、一緒にいる月日を重ねて行くうちに、『彼』の胸に沈む言葉も増えて行った。それは時に、言葉だけではなく、日紅の表情や、態度だったりもした。
けれど、今、それが積もり積もっていっぱいになってしまった。
『彼』は、苦しい。もう自覚している、苦しいと。これ以上はもう、一粒でさえ乗せることができない。その積もったものを全て捨ててしまえれば楽になれるのだけれど、そうはできない自分もわかっている。
「苦しい」なんて、まるで、ヒトみたいに。
そうだ。あたしは、小さかったけれど、本気で、心をこめて伝えたかったんだ。
巫哉は、怖くないかと問いながら、別のことを気にしているみたいだった。
だから、あたしは、巫哉にそのときの精一杯で伝えたかった。
『彼』が何を考えているかは分からないけれど、誰かに好かれていること、愛されていることは、その人の力になるんじゃないかと、とても嬉しいことだから喜んでくれるんじゃないかと、小さな頭で考えたんだ。
巫哉、その気持ちは今でも変わっていないよ。
夢は続く。日紅の忘れている日紅の過去。小さな日紅は強引に巫哉を家に連れて行こうと必死だ。
『彼』の真名を日紅は知った。ちゃんと聞いた。忘れないように。
日紅はふと不安になる。
これは夢よね?自分が夢の中にいるとわかる、夢。明晰夢というものだ。けれど、日紅の意識はそのまま、夢の中でよくあるような意識の混濁や倦怠感がないままに存在する。
まるで、日紅の過去に今の日紅がそのままタイムスリップ
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