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魔王の友を持つ魔王
§45 魔神来臨
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てたつもりは無いんだけどな……」

 最初から即斉天大聖撃破に動いていれば。ここまで焦土にはならなかったかもしれない。大猿も増えなかったかもしれない。全てはただの予想でしかない。だが。

「今よりは被害は減った筈、か」

 周囲に犇めく斉天大聖。既に数は万を越えるのではないだろうか。教主もアテナも冥王も黒王子も生存しているだけで驚きだ。もっとも彼らとて、生き延びるだけで手一杯のようだが。

「壊せ壊せー!!」

 闘いを無視して破壊に勤しむ猿達も多く、それが結果として生存を許していることを考えると人を困らせる、という特性を維持している彼らの存在は不幸中の幸い、と見るべきなのだろうか。

「――――」

 一瞬、天秤にかける。現状維持か広域破壊か。

「考え事とは余裕じゃのう!!」

 斉天大聖の一撃は、黎斗を透過し地面を抉る。

「――ぬっ!?」

 未来に転移することによる緊急回避。

「大聖、そろそろ終幕といこうか」

 黎斗の宣告に、大聖は笑う。

「何を!! 貴様の呪力では何も出来まい」

 連戦は、確実に黎斗の力を蝕んでいた。疲労は隠しきれず、呪力は雀の涙ほど。神殺しの魔王とは思えないほどの呪力しかない。

「そうだね。僕一人の(・・・・)力じゃあ、何も出来ない」

 影から、抜き出す質素な太刀。神すら殺めるその霊剣(つるぎ)の名前は――

「いくよ、天羽々斬。――倭は国のまほろば――たたなづく青垣山ごもれる、倭しうるわし」

 詠う。荘厳にその声音は響く。黎斗の内に呪力が膨れ上がっていく。

「馬鹿な!? 神懸りだと!!」

 驚愕に目を見開く斉天大聖を前に、汗を垂らしながらも大胆不敵に黎斗は笑う。

「呪力反発するかも、とか色々懸念はあったけどさ。死に物狂いでやれば意外とどうにかなるもんだよ。――さて、と」

 黎斗の顔から、表情が消えた。




「――開け。異界司る深淵の闇――」

 黎斗が唱う。今までとは違う、静寂な空気を身に纏って。

「我が想い。一夜の死闘(ユメ)を今ここに」

 詠う。声はそれ程大きいわけではないのだが、全員の耳に確かに届いた。

「それは決して、醒めない絶望(ユメ)

 黎斗の呪力がごそり、と削れる。須佐之男命の呪力もあっという間に底を尽いた。傍目にもわかる位に減少したそれは、一般人にも劣る程。

「絶望を以て現実と決別せん」

 これが、死と再生の女神。国土創世の女神。黎斗の切札。

「喪った存在(モノ)を、今一度……」

 両手を胸の前に。半透明の球が突如現れた。球を抱えて、黎斗は目を閉じ言霊を紡ぐ。

伊邪那美命(はじまり)サリエル(いち)
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