SAO編
episode3 『攻略組』の実力
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
四十七層主街区、『フローリア』に俺が降り立ったのは、既に一時まで秒読み段階の時間だった。見回せば、アスナのブチ切れ具合も秒読み段階だった。俺が最後の一人だったらしい。今にも怒鳴りつけそうな『狂戦士』殿は見ないふりをして、キリト他数人の知り合いに軽く挨拶をしていると、出発の号令がかかった。
今回、とあるボスの事情によってヒースクリフをはじめ大手ギルドのトップ連中の参加率が低いため、指揮を執るのは『狂戦士』アスナ。凛とした口調で迷宮区のマップ構造を説明しているのをぼーっと眺めていると、横からキリトが耳打ちしてきた。
「今日はいつもより装備が多いな」
「そこそこにな。いつもなんて俺、上着(レザーコ−ト)だけだし」
「そりゃ安上がりだな」
そう、今日は俺も正装というわけではないが、いつもよりも装備が多い。手には両手とも黒革製の、指の部分を切り取ったグローブ(スズメの涙ほどの体術スキルにボーナスが入る)。ブーツもいつもの耐久度だけが取り柄のボロ靴では無い、移動補正と防御増強効果のある(こいつもほんのちょっとだが)高級品に履き替えているし、極めつけは昨日、レミがエンブレムを入れ終えたばかりのガントレット。
前腕のみを覆う形状で、手までは包まないために『体術』スキル(貫き手とか)を妨げない片手盾の派生防具で、それなりの耐久度と防御力を有するが、普段は俺はそれを装備していない。ソラに言ったら「えーっ!?」とか言われそうだが、こいつを装備すると金属防具装備とみなされて『忍び足』をはじめとする幾つかの『隠蔽』スキルが使えなくなるのだ。
普段はモンスターを避けつつの探索がメインのため、フラグMob戦でもない限りストレージでの無用の長物だったが、今日は存分に活躍してもらわなければならない。いくらボスの攻撃力が低めとはいえ、生身でまともに攻撃食らうのは危険…っつーか、嫌だしな。
なんてことを考えている間に、最後の簡単なオリエンテーションは終わったらしい。アスナ達『血盟騎士団』の数名が迷宮区へと向かい始め、皆がそれに続く。キリト達もそれに続いて歩いていく。
(……うーん。ボス攻略、ね…)
どうにも現実感が無い。いや、緊張感が無い。
よく無いなぁ、とは思うものの、こればっかりはどうにもならないか。
ぼりぼりと寝ぐせのついたような頭を掻きながら、俺は集団の最後尾を歩き出した。
◆
攻略組の移動は、徒歩だ。別の手段としては『回廊結晶』を使ってボス部屋の前に全員を転移させるという手段も無くはないが、結晶自体の希少価値を考えればそうそう毎度使えるものでもない。今回はボスの攻撃手段も分かっており、メンバーのレベルも十分高い(らしい)。迷宮区を歩いても特に危険はないとの判断だ。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ