第百四十八話 こけら落としの日
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ぎるのでは?」
「ケスラーの疑念も尤もね。第一に、グリューネワルト伯爵夫人へ注目を集めることで、お父様の改革が伯爵夫人との間に生まれるかも知れない新王子に帝国を継がせる為に改革を行っていると思わせる為。
第二に、新王子の後見には軍部で力を付けたシェーンバルト男爵を持って当てると思わせる為。
第三に、それにより、貴族の憎悪と感心をあの二人に向けさせ、私が動きやすくする為。
第四に、番犬は強い方が良いでしょう。
尤も飼い主に牙を向け頸を噛もうとしてるとしても、使える者は使わないと損じゃない」
テレーゼがウインクしながら話した事に、ケスラーは益々驚愕した。
「殿下、あまりに……」
あまりには壮大なのか、あまりに酷いのか、ケスラーの口からこの時は述べられる事は無かった。
「ケスラー、私は、部下や臣民を使い捨てになどしたくはありません。嘗て東漢(後漢)の光武帝は偉ぶらず、民を慈しみ家臣と苦楽を共にし、大らかで庶民的な皇帝でした。彼の元には雲台二十八将と言う、『みな風雲に乗じて智勇を奮い、佐命の臣と称され、志操と才能とを兼ね備えた者たちである』と称される天運に導かれた将帥達が集まり、しかも粛正された者は絶無と言う素晴らしい君臣の結びつきと言えましょう。光武帝こそ私の理想の君主と言えましょう」
普段から、臣民や部下を大事にするテレーゼの姿を知らない他の将帥が今の言葉を聞いたら、取り繕う為の言葉だと誤解するであろうと、ケスラーは思った。
「殿下、小官の様に殿下との長きにわたる繋がりがなければ、誤解させる可能性がございます」
ケスラーの忠告にテレーゼは答える。
「ええ、判っているわ。こんな事、ケスラーかグリンメルスハウゼンぐらいにしか言わないわよ」
「それならば宜しいのですが」
安堵した表情のケスラーを横目に冷静なテレーゼであった。
外からベルが鳴り、ケスラーが応対する。
「殿下、そろそろ、こけら落としのお時間でございます」
「そうね、行きましょうか」
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