記憶の奏
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君たちは、自分が幸せなことに気づいているだろうか
家族や仲間が自分を愛してくれるのが当然だと思っているのではないだろうか
……幼かった俺は誰からも愛されなかった
周りの人間が自分の言葉に耳を傾けてくれるのが当たり前だと感じているのではないだろうか
……幼かった俺は誰にも相手にされなかった
見知らぬ誰かが親切にしてくれて、それに感謝をしない事もあるのではないだろうか
……幼かった俺にはその親切すらなかった
…誰に頼ることもなく俺は血反吐を吐き、泥に塗れながらその幸せをもぎ取り、俺、秋山忍はその幸せに必死に齧り付いて生きてきた
俺は、世界からその存在を拒絶されていた
そして俺は…、俺を拒絶し地の底に突き落としたこの腐った世界に報復を報いてやった
破壊、蹂躙、支配の限りを尽くし、目の前に立ちふさがるものは全てなぎ倒し何もかもを破壊して来た
そして俺に逆らう者は誰であろうと関係なく殺した
それは、最高の快感だった
俺が最も嫌いだった他人の幸せ、なんの努力もなしに得た幸せ、俺が手にすることが出来なかった幸せ
それらを皆俺のこの手で壊すことができるのだから
…破壊は俺の喜びだった…
ここ大導連合本部にてこの世に二人しかいない大導師の称号を得た
今から俺は世界のナンバー3になれる
大導連合は力が全てであり前々からここに来たいと思っていたが
俺の力を利用するためだろうか、向こう側からアプローチが来た
こちらから交渉する手間が省けてラッキーである
「…………………っ」
何やら大導連合のトップのジジィがごちゃごちゃ言っているが、そんな事はいまの俺の耳には入らない
今の俺は目の前のジジィをどうやって片付けるかで頭が一杯だった
そして俺の後ろでこのジジィの話をクソ真面目に聞いている導師共もまとめてあの世に送ってやるさ
せいぜい今のうちに残り短い人生を楽しんでおけばいい
パチパチパチパチ
いつも間にかジジィの話が終わり、俺がこの部屋から出ていこうとすると周りにいた連合の者が拍手を始めた
その拍手をする人間の中にいつも俺と一緒に戦ってきたひとりの少女がいた、
小さくとても愛らしい女の子
その子は俺に屈託のない笑顔を向けている
いつも、いつも俺の隣にいて笑っていたあの子
幸せそうな笑顔
幸せの象徴である笑顔が何よりも嫌いな俺だが何故かその笑顔だけ
俺は許すことができた
この天使のような笑顔を守ってやりたいとすら思う
俺が部屋を出ると
「マスター、おめでとうございます」
あの子、イチノがぱたぱたとこちらに走り寄ってくる
イチノがマスターと呼ぶ相手は俺の事だが
「そうか?、たいした事じゃないと思うけど」
「そんな事ありませんよ、マスターは世界一ですよ」
にこにこしながらイチノは俺に言う
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