After days
fall
《荒野》の王
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を続けたまま立ち上がりつつあるライオンを見据えた。
「まずは非礼を侘びよう。ちょっとした『洗礼』だ」
「ちょっとした、ってレベルですか。えらいハードですね」
「あれぐらいでヘコたれていてはここではやっていけないからな。とにかく、君達は合格だ。私の名前は『トリスタン』。ようこそ《荒野》の集落『ドヴァー』へ」
____________________________________
トリスタンに連れられ、入った建物はこの集落の中で最も大きいものだった。
「WBOは毎日のようにアカウント数が増えている。が、《荒野》に新たな住人がやって来たのは実に1ヶ月ぶりだよ」
「それは、ネットで書かれていた《弱小》という……」
キリトがトリスタンにおずおずと訊ねると、彼はコクリ、と頷き話始めた。
「《荒野》は何も最初からこんな寂れていた訳ではない。第1回聖獣王決定戦を過ぎた辺りでは最大勢力だったのだ」
確かに、建物が幾つか建っていることからかつての繁栄は伺える。それが今ではどうなっているのだろうか。
「それが今や、このようなザマに成ってしまったのは、他でもない。私のせいなのだ」
俺達は息を飲んだ。先程までの雄々しい表情が、一気に寂寥を含んだ悲しみの表情に変化したからだ。
「第1回聖獣王決定戦。その初代王者は私だった」
「なるほど……どうりで」
あの強さはこの体の動かし方を熟知していなければならない。彼が聖獣王というのも納得のいくものだった。
「ところが、第2回大会。私は決勝にて敗北したのだ」
「な……!?」
キリトと俺が苦労してやっと勝てたこいつを負かしただと?
「聖獣王という者に敗北は許されい。同じ相手に一度の敗北で体に傷を刻まれ、2度目は聖獣王の資格を失い、二度とその栄冠を得ることは出来ない」
トリスタンの前足には先程までは無かった新たな傷があった。言うまでもなく、俺達に付けられた傷だ。
「私が敗北した事により、《荒野》は《弱小》のレッテルを貼られ、今や住人は10数名。皆、実力派ではあるのだが、絶対数で劣っているので肩身の狭い思いをしているのだ」
そこまで一気に話すと、トリスタンは藁を敷いた席に座り、俺達にも壁際のものを勧めてくる。
「なぁ、トリスタン。今日の大会は出るんだよな」
「……無論だ。やつ――ガノンとは決着をつけなければならん」
「ガノンってやつはどこに居るんだ?」
「《森林》の長だ。アバターはエゾヒグマ」
エゾヒグマは確か、体長2m以上の巨体に圧倒的なパワーを擁する獣だ。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ