第六章 贖罪の炎赤石
第六話 学院に伸ばされる手
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らない。
反射的に現れたメイジに向かって銃の引き金を引こうとした銃士を、アニエスは制した。
「賊ども! 貴様たちは既に囲まれている! 大人しく人質を解放すれば命の保証はしよう! だが! このまま立てこもり続けた場合は、命はないと思え!!」
アニエスの言葉に、今度は直ぐに返事が帰ってきた。
「ハハハハハハハハハッ!! い、命の保証っ!? じゅ、銃士ごときがオレたちを殺せると思ってやがる!?」
笑い声混じりでだが。
「既にお前たちの仲間を四人殺している! それでも笑えるのか!」
「おお怖い怖い……まあそんなことはどうでもいい。オレたちの要求は簡単だ。まずはお前たちの女王様であるアンリエッタを呼んでもらおうか」
激昂するアニエスに向け、メンヌヴィルは手をひらひらと振る。ふざけた態度をとるメンヌヴィルだが、アニエスはそれに注意を払うことは出来なかった。
「陛下を呼べだと……っ!」
「そうそう。オレたちの要求はただ一つ。アルビオンから兵を引いてもらうだけの簡単な話だ」
メンヌヴィルの言葉に、自分の予想が当たったことを知り、この最悪の状況をどうするかに集中していたからだ。人質程度で軍の行動が変わる訳は普通なら考えられないことだが、人質となっている者たちは、全てが貴族の子女。それが九十人もいるのだ。十分撤退の可能性がある。
この状況を防げなかった自分への余りにも大きな不甲斐なさに、アニエスは噛み砕かんばかりに歯を噛み締めていた。
返事が来ないことに苛立ったのか、先ほどよりも荒れた口調でメンヌヴィルが声を上げてくる。
「返事はどうした! いいか、オレは気が長い方ではない! 無駄に時間を掛ければ人質の安全を保証せんからな! それとここに呼んでいいのはアンリエッタか枢機卿だけだ! それ以外を呼んだ場合は、人質を殺す! いいか! 分かったな!」
「……っっ!!」
メンヌヴィルの言葉に、歯を噛み締める力が更に強まる。
これで増援を呼べなくなった。元から人質がいる中どれだけ応援を呼んだとしても意味がないと分かってはいたが。それでも選択肢が一つなくなるのは痛い。
「返事はどうした! 聞こえないのか!」
「ちっ」
何処か楽しげに聞こえるメンヌヴィルの声に、下品な舌打ちを一つする。
「五分待つ! だが! 一分超えるごとに一人殺す! いいか! 一分につき一人殺すからな!」
「……っ」
次に聞こえたメンヌヴィルの言葉に、反射的に立ち上がりかけたアニエスを止めたのは、
「これは……一体……」
「っ……貴様は」
後ろから掛けられた、呆然としたコルベールの声だった。
呆けたように立ち尽くすコルベールが、ゆらゆらと定まらない視線をアルヴィースの食堂を向けていた
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