第六章 贖罪の炎赤石
第六話 学院に伸ばされる手
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る。
メンヌヴィルに睨まれ、オスマン氏はまるで巨大な蛇に全身を巻きつかれたような気がした。
「貴様一人に、国を動かせると思うのか?」
「っむ……」
「くくっ……」
歯を噛み締め俯くオスマン氏を見下ろし、喉の奥で小さく笑ったメンヌヴィルは、顔を上げ食堂を見渡す。
「じじぃ、ここにいる奴らで全員か?」
メンヌヴィルに声を掛けれたオスマン氏は、ゆっくりと顔を上げると食堂を見渡す。
「……ん?」
捕虜となった生徒たちの姿を見続けていたオスマン氏は気付いた。
「どうした?」
食堂に連れてこられた者たちの中に、自分が頼りにする者たちの姿がないことに。
「どうしたと聴いている」
「……ふむ」
杖を突きつけながらにじり寄ってくるメンヌヴィルに、オスマン氏は深刻な表情を浮かべた顔を向けた。
オスマン氏の向けてくる深刻な視線に、メンヌヴィルの足が止まる。
「……どうした?」
メンヌヴィルの再三の問いかけに、オスマン氏が重々しく口を開いた。
「……生徒ってこれで全員かの?」
「聞いているのはオレだっ! 何を言っているんだ貴様はっ!?」
「いやのう。この学院って結構生徒数が多いんじゃよ。それだけいる生徒全員の顔を全員覚えているわけないじゃろ」
「ちっ……もういい! なら――」
オスマン氏に聞いても無駄だと理解したメンヌヴィルは、別の者から聞き出そうと顔を上げ、
「食堂にいる者たちに告げる! 我らは女王陛下の銃士隊だ!」
食堂の入口に向けた。
食堂をメンヌヴィルはぐるりと見渡す。本塔を攻めたジュヴァンニはいるが、火の塔に向かったセレスタンは未だに戻っていない。
「……ふんっ……どうやらセレスタンは失敗したようだな」
「そのようですね。で、どうしますか?」
「決まっている」
火の塔に向かった仲間が戻らず、代わりに敵が現れたということは、仲間がやられたということだ。にも関わらず、傭兵たちの顔色は全く変わらない。
傭兵の一人に声を掛けられたメンヌヴィルは、一度肩を竦めて見せると、食堂の外にいる相手と交渉するため入口に向かって歩き出した。
朝日が未だ姿を見せない中、塔の外周をめぐる階段の踊り場にアニエスたち身を隠していた。視線の先には、襲撃犯が人質となった女生徒たちとともに立て篭もっている食堂がある。
食堂に向かって何度か声を上げたが、襲撃犯からの返事はない。
アニエスがもう一度声を上げよう口を開こうとするが、その前に食堂の入口が開いた。食堂から現れたのは、服の上からでも鍛え抜かれた肉体を感じさせる体躯の持ち主のメイジだった。空に浮かぶ月明かりでは光量が足りず、どんな表情が浮かんでいるかはわか
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