第六章 贖罪の炎赤石
第六話 学院に伸ばされる手
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いる火の塔の前に、二人の銃士の姿があった。二人の銃士は、駐屯地である火の塔の警戒のために立つ歩哨だった。手にはマスケット銃を持ち。油断なく周囲への警戒を行っている。
太陽の姿は遠く。闇は未だ深い。
周りに響く音といえば風が草木を揺らす音だけ……。
そんな静かな空間に……不自然な音が響き。
「っ……」
「……ん」
風が草を揺らす音とは違う。ほんの僅かな違いに敏感に反応した年長の銃士が部下に視線を送ると、部下は顎を引き頷き、銃に球を込め始めた。球を込める間、もう一人が腰から剣を抜き隙を生まないようにしている。そうやって互いに銃に球を込め終えると、二人は音が聞こえた方角に銃を向けた。
「……」
「……」
二人は声を上げることなく、手指の合図だけで音が聞こえた方角に向かって動き出そうとし、
「っ……か……ぁ……っっ?!」
「っぁ! っっ?!」
前のめりに倒れた。
受身を取ることなく地面に転がった銃士二人は、死の間際の虫のようにピクピクと痙攣している。喉に向かって伸ばされた手が、届く前に力なく地面に落ち……粘ついた赤い液体の中に沈む。
手を浸す赤い水は時と共に大きく広がっていく。その水源は、倒れ動かなくなった二人の銃士の喉元。
倒れ動かなくなった二人の銃士の喉元は、鋭い刃物で切り裂かれたようにパックリと割れ、そこから赤い血が流れて出ている。
手だけでなく全身が赤く濡れ始めた二人の女の体は、空に昇る月の光が照らしていたが。それを遮る影が唐突に現れた。
「……それなりに鍛えられてはいるな」
「ですな。……しかし、もったいないですな。見れば若い女じゃないですか。生かしておけば色々楽しめたと思いますが?」
「ふんっ……興味ない。それより――」
闇の中から現れたメンヌヴィルとその部下たちは、風の魔法で喉を切り裂かれ殺された銃士を囲むようにして立つ。銃士の一人の髪を掴んで持ち上げ顔を確認した男が勿体なさそうに呟くが、メンヌヴィルはそれを鼻で笑うと、顎で隣に立つ部下を促す。
「目標は三つですね。本棟と寮塔。そしてここのようです」
促された部下が懐から地図を取り出すと。それを、明かりが漏れないよう布で覆われた魔法の光で、また別の男が照らし出す。
「駐屯してる奴らは銃を持っているようですが」
「それがどうした? オレたちメイジにとって、銃などものの数ではない」
地面に転がったマスケット銃を蹴りながら、男の一人が声を掛けてくるが、メンヌヴィルは顔を向けることなくそれを一蹴する。
「オレは寮塔をやる。ジャン、ルードウィヒ、ジェルマンはついて来い。ジョヴァンニは四人選んで本塔に行け。残りはセレスタンについて行け」
メンヌヴィルが命令を下すと、男たちは無言で
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