第65話 =蝶の谷の動乱=
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「っ……おい…キリト、リーファ……見てみろよ…」
全員が落ち着いてきたところで辺りを見渡すと下には草原が広がっており、所々にある湖はその青い水面を輝かせている。だがそれらを空気と思わせるほどに圧倒的だったのが雲の向こう、おぼろげに浮かんでいる巨大な影だ。
「…あれが…」
「世界樹…か…」
キリトはもちろん、リーファもここまで近づいてみたのは初めてだろう。この大きな空をさせている柱のように伸びている幹が垂直に天地を貫き、上部の枝葉は幹に比例するかのようにとてつもない大きさをアピールしていた。まだこの場所からはあの樹まで20km以上離れているのも関わらず俺たちの視界の半分を支配している。あの根元にあるらしいアルンに行けばどれほど大きな世界樹の姿が見れるのか想像すらつかない。
「あ、こうしちゃいられない。リーファ、領主会談の場所ってのはどの辺りなんだ?」
「そういえばそうだった…何のために早く抜けてきたんだよ俺たち…」
不意にキリトが我に返り言って、当初の目的を思い出した。
「あっ…そうね。ええと、今抜けてきた山脈は輪っかになって世界中央を囲んでるんだけど、そのうち3つだけ大きな切れ目があるの。サラマンダー領へ続く『竜の谷』、ウンディーネ領と繋がる『虹の谷』、最後にケットシー領に繋がっている『蝶の谷』…。会談はその蝶の谷の内陸側出口で行われるらしいから……」
リーファは視線とともに全体を見渡すべく体を一回転させると、北西へと指を刺した。
「あっちにしばらく飛んだところだと思う…」
「了解。残り時間は?」
「そんなに時間無いっぽいぜ……残り20分弱……サラマンダーはあっちからこっちだから…」
キリトの問いに答えながら南東から北西へと指を動かす。
「俺たちより先行してるのかどうか微妙ってことか……ともかく急ぐしかない。ユイ、サーチ圏内に大人数の反応があったら知らせてくれ」
「はい!」
いつになく真剣な顔でうつむく小妖精にうつむき返し、一気に翅を鳴らして加速に入った。
†
飛んでいて気付いたのだが10分くらい飛行しているにもかかわらずモンスターエンカウントがまったく無い。リーファの話によるとアルン高原と呼ばれるこの場所にはモンスターが一切ポップしないらしい。それが会談をここで行う理由らしいのだが今回に限って、そして俺たちだけに限ってはそれはありがたいことではなかった。
「さっきの…『トレイン』って言うんだっけ?あれができないじゃん…そのサラマンダーズにぶつけてたら時間が稼げるかなって思ったんだけど…」
「…よくそんな悪知恵はたらくわね……でも、今回は洞窟以上の大部隊だから、警告が間に合って全員でケットシー領に逃げ込めるか、もしくは揃って
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