第九話
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話には聞いていたけど、どこまでも自由なんだね、君は」
「私のことをご存じなのですか?」
「ああ。アンは君がいてくれたから、王女になる覚悟を決めたんだろう。結婚、か。従姉妹の結婚だ、喜ばないわけにはいかないな」
「お止め下さい。自分の意思に背いた発言は、アンへの侮辱になります」
「―――それでも、建前は必要だ。王族となるとね、その辺りが顕著になるんだよ」
「この場では、誰も憚る者はいませんよ」
「そうだね。………正直な話、残念に思うよ。政略結婚なんて当たり前なことだと理解していたつもりだったけど、従姉妹が―――誓いを契りを結んだ相手が勝手な都合で引き裂かれるというのは、どうにも容認できない。まぁ、どうせこの身は明日にでも死ぬかもしれないのだから、今更な悩みだけどね」
「ウェールズ様は、この戦で死ぬつもりなんですよね」
「ああ。誰よりも真っ先に」
そう答えるウェールズの瞳は、ただ真っ直ぐを見つめる。
「それが無意味なことだとしても?」
「無意味なのは承知している。だが、もしここで逃げおおせても、血眼になって、僕の首を取りに来る。更なる争いの種が拡がるだけだ」
「見上げたお心です。ですが、取り繕うのはもうやめませんか?」
「………駄目だ。これを口にすれば、躊躇いを持ってしまう。この想いは墓まで持っていくつもりだよ。まぁ、まともな弔われ方は期待していないけど」
「―――はぁ。ほんと、女々しい男ねウェールズ」
もう、限界。
「み、ミス・ヴァリエール?」
「アンが書いた手紙がラブレターだってのはバレバレなのよ。そしてあのアンが、勇敢に死ねだなんて文を書く訳がない。間違いなく、亡命を懇願する内容が綴られているでしょう。それを突っぱねてまで死を受け入れる、ね。これだから莫迦は嫌いなのよ」
ドズ、と言う音と共に崩れ落ちるウェールズ。
地面に伏した彼に向かって、一言。
「生憎、バッドエンドなんて趣味じゃないの。アンタが私の友達の意見を否定するなら、こちらもアンタの意見なんて尊重するつもりはないわ」
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