第6話『力を求めたその先は』
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なんも要請でてねぇんだわ、わかる? これがどういうことか」
「……?」
「ったく、察し悪いのな。これだからガキは……まぁ、いいや。要するにイーストブルーに今のところ本部が必要なほどの問題は起きてないの、わかった? はい、おつかれさん、かえっていいよ」
言うや否や立ち上がって背中を向けようとするその男に、慌てて声をかける。
「い、いや! ちょっと待って!」
「……」
このままだと村が救われない。
会話の意味はよくわからないけど、それだけはなんとなく感じる。この人は村のために動いてくれる気がない。必死になって呼び止めた甲斐があったのか、男が立ち止まってくれた。
少しだけほっとしつつ「もうちょっとちゃんと調べてよ」といった瞬間だった。
男が振り向き、笑顔で顔を寄せてきた。
気持ち悪いと思ったけど我慢。
「大人は忙しいんだよ、くだらない嘘で人の手をわずらわせてんじゃねぇよ……いい加減にしないと、売っちまうぞ?」
実に恐ろしいことをさらりと言ってのけてくれる。
つばを飲み込んだ俺がおかしかったのか、役人はさらに笑顔を深めるけど、俺はこの男の言葉がひっかかっていた。
嘘?
嘘って……なんだ?
あの日の光景が、脳裏をよぎる。
俺は撃たれた。
ベルメールさんは血だらけだった。
ナミとノジコはないていた。
俺を助けようとしてくれた村人たちは抵抗して、ずたぼろにされていた。
嘘って……なにさ。
自身の身体が一気に渇くのを感じていた。
「そもそもイーストブルーの人間がこんな場所にいるわけねぇだろ……人攫いにあって、グランドラインのこんなとこまでどうやってくんだよ、くだらねぇ嘘つきやがって、っていうかそもそも嘘じゃねぇにしても非加盟国の人間が政府に助けを求めてんじゃねぇよ……おら、さっさと帰れクソガキ」
実に笑顔で、手振りだけは親切な対応だ。この口上をきいていない人間はきっとこの男を親切な役人だと勘違いするのだろう。
手に力がこもる。
――これが、海軍?
ただただ絶望を感じてしまう。
もちろん、海軍は実際にここまで頭ごなしにハントの言い分を否定する組織ではない。ないのだが、これはもうハントの運が悪かったとしかいえない。
いくらハントが子供とはいえ、この海軍本部がイーストブルー出身という、子供が一人で来るには遠すぎる場所だという事実があったとしてももう少しまともな人間が受付を担当していたのならば少なくともイーストブルーの海軍支部に確認をとってくれるくらいはしていただろう。
だから、運が悪かった。ハントの目の前にいる男は決して子供にもちこまれた言葉を信じて自分の労力を費やそうなどと考えるような男ではなかったのだから
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