第6話『力を求めたその先は』
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ハッとした表情をして、まるでさび付いた機械のような動きで問いかける。
「まさか、それは盲点だった……とか言わんじゃろうな」
「ふっ、盲点だった」
遠い目をして、船首に片足をのせてなぜか格好をつけて言うハントに、とりあえずジンベエからの拳骨がひとつ。
「……ったぁ」
「あほか、お前さんは!」
「よく言われてました!」
「えばることか!」
つばをとばしながら叱りとばすジンベエにハントが「いや、本当に頭になかったんです」と言葉を落とす。いきなり魚人の海賊に殺されかけ、気づけば今度は人間の海賊に好きなようにいたぶられ、目の前のことにしか考えがいかなくなっていた。
痛い、怖い、辛い。
魚人の海賊に殺されかけたあの日以来、その3つが主な感情だった。余裕など一切なく、ただその一瞬一瞬のことにしか思考がなかった。
「……」
ふと言葉を止めたハントがジンベエへと顔を向けた。
――死ぬ。
そう思った瞬間に出会ったのが、子供心から惚れ惚れするような格好良い技で海賊を吹き飛ばし、圧倒的強さを示したジンベエ。
強く、格好良く、ヒーローで、勇者で、希望。
ハントにとって、ジンベエはソレだった。
「……村を支配した海賊を助けてもらった後とかでも、あなたの弟子になりたいです」
控えめに、それでも願いをこめた言葉はジンベエの一言でばっさりと切られてしまう。
「強くなりたければ海軍にでも入ればよかろう、さっきも言うたがわしにはお前さんの面倒を見る義務などない……そもそも海賊の弟子になってどうするというんじゃ」
やはり断られてうなだれようとしたハントだが、その言葉に顔を上げた。その顔はただただ驚きに彩られている。
「海賊!?」
「お、なんじゃ……知らんかったんか」
「海賊!?」
「うるさいのう、そんなにショックじゃったか?」
「かか、か……かいぞ――」
「――うるさい」
壊れたステレオレコーダーを叩いて直したジンベエは、もうこれで話は終わりだといわんばかりに付け加える。
「ほれ、もうシャボンディ諸島につく……はぐれんとついてくるんじゃぞ?」
「……」
うなだれるハントの顔を、なぜか見ていられずに光差す海中へと顔を向けるのだった。
「ほれ、わしは海賊どもをひきわたさんといかんからここでお別れじゃ……そこの事務に自分で顔を出して、後は自分でなんとかするんじゃぞ?」
「あのジンベエししょ……さん」
さっさと行ってしまおうとするジンベエを呼び止めた。
「なんじゃ、弟子にはせんぞ?」
その言葉に、ハントは少しだけ笑顔に。
「ありがとうございました、お世話になりました」
まだ少し元気のない様子で事務の
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