GGO編
閑話 崩壊への道標
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その日、彼はある街の、ある場所の、ある店に来ていた
『また高級な事で』
呟くように言って店の中に入った彼はしかし、特に店の内装に興味を持つことは無く寄って来たウエイターに連れの名を伝える。
案内された席に座っていたのは、一人だった。
『おっ、よく来たナ』
『よぉ、お前が報酬に金を指定しないなんざ珍しいな』
『にゃハハハ、ま、たまには良いじゃないカ。オネーサンだってデートの一つくらいはしたいんだヨ』
『その相手が俺か?そりゃ光栄だな』
苦笑しつつ彼は紅茶を口に含む。いつも飲んでいるインスタントと比べるとやはり味も香りも段違いなそれに驚きつつ。彼は聞いた。
『で?ホントは何の用だ?』
『其処は聞かないのが良い雰囲気のヒケツなのにナァ……』
彼の言葉に正面に座る人物は面白がるように笑い、少しカップに視線を戻すと、目を細めて言った。その顔から、表情を読み取る事は出来ない。
『……と、会いたいって人が居るんダ』
『俺と……?そのためにお前が?』
『引き合わせ役ダ。代金は貰ってル』
『それはまた、何時の間にそんな商売始めたんだ?』
首をかしげた彼に、目の前の人物は少しだけ迷うように首を振った後、その顔をガバッと上げた。
『あ、あのナ……『悪い、待たせたか』っ……!!』
何かを言おうとした目の前の人物の瞳が、突如その背中から投げかけられた声に反応してか、大きく見開かれ、凄まじい緊張の光を見せた。
少しだけ震えるその方が、大きな感情の揺らぎを表しているかのようで、その人物のそんな姿を初めて見た彼は少し戸惑う。
そして……彼は、ゆっくりと顔を上げ……
『遅くなって本当に悪かったな。つなぎ役、感謝すんよ……』
その人物を、脚、腰、腹、胸と見つめて……
『“鼠”君』
顔を……見た。
『…………!』
ゾワリと、全身の毛が逆立つ。
目を見開き、目の前の人物と同じように、その瞳を緊張に揺らす。
それは……その、顔は……
『な、んで……アン、タが……』
『あぁ、そうだったな……よぉ……』
その言葉に、立っていたその人物は……“二ヤリ”と、笑った。
『久しぶりだな』
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