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ヴァレンタインから一週間
第13話 麻生探偵事務所にて
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「おい、瑞希(ミズキ)、客やで」

 有希に抱かれたまま探偵事務所内に入った黒龍のソノが、最早ネコのフリをする事さえ止めたように事務所の奥に向かって声を掛けた。

 事務所の広さはおそらく十畳ぐらい。事務所の外観通り、やや黒ずんだ木目の床と薄汚れた天井が目に付く、如何にも流行っていないと言う雰囲気の探偵事務所で有った。
 もっとも、流石に来客用のテーブルと、その周りに置かれたソファーの周りは掃除が行き届いて居て綺麗な様子。但し、それ以外の場所に関しては……。
 先ず目に付くのがタバコの吸い殻の積もった灰皿とビールの空き缶。更に、コンビニから買い込んで来た酒の肴の入って居たで有ろうトレイの数々。昨夜は、所長と大家の二人で夜通し飲み明かした事が丸わかりの状態。

 そして、有希や万結の視界からは出来るだけ早い段階で隠す必要の有る雑誌の数々。

 そのような些細なトコロも、俺の暮らしていた世界と、この長門有希の暮らして来た世界とは同じ状況に成ると言う事ですか。
 周囲の状況を見渡した後に、そう感心する俺。

 但し、俺が知って居るこの探偵事務所の仕事は人探しや、ましてや居なくなったペットを探す事でも有りませんでした。むしろ、ここが流行っていては、この世界的にはかなり問題がある探偵事務所ですから、これでも充分だとは思いますけどね。
 何故ならば、ウラの世界……闇や魔法が支配する神話の時代から続く世界では、この麻生探偵事務所はそれなりの有名な組織で有る事は間違い有りませんから。

「は〜い、ただいまですぅ」

 探偵事務所の奥。俺が知って居る探偵事務所と造りが同じならば、厨房が有る部屋から若い……いや、むしろ幼い女の子の舌っ足らずの声が聞こえて来る。そして、漫画や小説などでは聞き覚えが有るのですが、現実世界では滅多に耳にする事の出来ないパタパタと言う足音の後に、その少女が姿を現した。
 洗い物の最中だったのか、手をタオルで拭きながら現れた少女。見た目から言うと、俺とそんなに変わりのない年齢……つまり、中学生ぐらいにしか見えないのですが、俺の知って居る彼女はこの三月に高校は卒業のはずです。そしておそらく、この春より大学に通う事となるはずの少女でした。

 白い……とは言っても健康的な肌。やや受け口気味の薄い唇。くるくるとよく変わる瞳は、今は光の加減かダークブラウン系に見えますね。髪型は、昔――。初めて彼女と出会った三年前はシニヨン。つまり、束ねた髪の毛を両サイドに纏めた形だったのですが、流石にそのままでは彼女の童顔、化粧っ気のない雰囲気。やや小さめの体格などと相まって幼く見える事を嫌い、現在では緩やかなウェーブを持った長めの黒髪を肩の下ぐらいまで伸ばしています。
 目の前に現れた少女が、俺の良く知って居る彼女の異世界同位体な
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