暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
白い少女
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る動的オブジェクトならプレイヤーにせよモンスターにせよ、あるいはNPCにせよターゲットした瞬間必ず表示されるはずのカラー・カーソルが、少女の頭上には出現しない。

大抵のことに遭遇し、体験してきたレンでも、こんな現象に遭遇したことはいまだかつてなかった。

「何かの、バグ、かな………?」

レンはそっと手を伸ばし、少女の頬に触れた。

ひんやりとした、滑らかな陶器のような感触が伝わってくる。

だが、少女は起きない。死んだように眠っている。

──とりあえず、放ってはおけないよなー。

などとレンは考え、とりあえずお約束なような気がして少女をお姫様抱っこしようとする。

──が、

持ち上げられない。

少女の体重は、かなり軽かった。

おそらく同年代の平均体重と比べても、明らかに下だろう。だが、それを持ち上げる方に問題があった。

レンのレベルアップ時のステータスアップ値は、完全に敏捷値に割り当てられている。レベルアップ時に自動で増える、レベルアップボーナスのおかげでレベル1の時と全く同じ、というような事態はかろうじて避けられているが、それでもレンの筋力値ははっきり言って中層ゾーンのプレイヤーをも下回る。

リュックサックなどの荷物程度ならばまだしも、自分と同じくらいのオンナノコなど持ち上げろと言うのが、酷な話だろう。

結果レンは、色々試行錯誤したあげく、普通に抱っこするという形で収まった。

最初からこうすればよかったのに、と思わないでもないが、そこはお約束なのでしょうがない。

そしてレンは、少女を抱えたまま自らの家の方向にゆっくりと(重いのに変わりはない)歩き始めた。










やっと家に戻り、メイドNPCが淹れてくれたお茶で喉を潤し、上がっていた息が整ってきても少女の意識は戻らなかった。

とりあえずダイニングのソファーに少女を横たえ、毛布を掛ける。

そしてレンはその向かいに置いてあるソファーに腰を下ろした。

いまだに少し混乱している頭を、レンは紅茶で覚ます。そして今まで起こった事から解かることをピックアップし、整理する。

まず一つだけ確かなこと。それは彼女がNPCではない、ということだ。

システムが動かすNPCは、存在座標を一定範囲内に固定されておりプレイヤーの意思で動かすことはできない。

現にレンの飲んでいる紅茶を淹れてくれたメイドNPCであっても、このレンの家(城)の敷地内から外には出られない。

手で触ったり抱きついたりすると、ほんの数秒でハラスメント警告の窓が開き、不快な衝撃とともに吹っ飛ばされてしまう。

そして二つ目。何らかのクエストの開始イベントでもない。

普通、何らかのクエストやイベント
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