Mission
Mission7 ディケ
(6) キジル海瀑(分史) A
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御した。
理解が遅れたユリウスの左腕が、誰かの両手でぐいっと引っ張られた。
「ユティ」
「肩、使って。ここから離れる」
自身で戦えないのも初めてならば、こうも他人に手厚く守られたのも初めてだった。
ユリウスは苦いものを堪えてユティの細い肩に腕を回し、波打ち際から離れた。
辛うじて元いた場所まで戻ると、ユティは容赦なくユリウスの腕を肩から解いた。尻餅を突き、拍子に切り傷が痛んだ。
「ありがと、ミラ、ミュゼ。息ぴったりだったね。もう撮れないのが残念」
ユティはおもむろに首から提げていたカメラを砂浜に投げ捨てた。命の次に大事、と公言したカメラを、だ。
「ここからはワタシがやる。――ユリウス。時計、少しの間だけ返して」
言うが早いかユティは、ユリウスのベストのポケットから銀の懐中時計を抜き取った。続いて自分の短パンのポケットから別の懐中時計を取り出した。
ユリウス以外の者が驚きに息を呑む。
「ユティ、あなた、その時計――!」
「……ごめん」
ユティは海瀑幻魔へ向かって歩き出す。歩きながら、両手に掴んだ懐中時計を空中に放り投げた。
懐中時計を中心に歯車の陣が広がる。ユティの体にいくつもの青い歯車が入り込み、その身を同色の殻で覆ってゆく。
無慈悲に響く秒針の音。
歩き終わる頃には、ユティの変身は終わっていた。
首から下を覆うマリンブルーのスリークオーター骸殻。翼刃が大きく反ったフリウリ・スピア。
メガネが消え、トレードマークの巻き毛が緩んで下りて、肌も色褪せた。
「ミラはローエンとエルを守って。ミュゼ、サポートお願い」
ユティは返事を待たず、海瀑幻魔めがけて――爆ぜた。
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