第三十八話 神父その十一
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「むしろね」
「うん、凄くいい人達だから」
「四人になるのね」
「今戦う人達はっていうと」
上城は彼等の名前をここで出していった。
「高代先生に加藤さんに広瀬さん」
「後権藤さんって人よね」
「それにね。最後は」
「中田さんよね」
「五人。戦わない人は四人だよ」
戦いを止めようとしている剣士はだった。それだけだった。
「五人と四人。数じゃ負けてるけれどね」
「それでも。力を合わせれば」
「絶対に戦いを止められるから」
そう信じるが故にだった。上城は今明るい声になっていた。そしてその声で樹里に対して言うのである。他ならぬ彼女を見ながら。
「それができるよ」
「じゃあその為には」
「強くならないとね」
上城は前を見た。そこに強いものを見ていた。
「戦いを止めるのならね」
「何かをはじめるのにも力は必要で」
「止めることにも必要だからね」
「ええ、それじゃあ」
「やってみるよ」
樹里に顔を戻して。そのうえでの言葉だった。
「怪物達を倒して力をつけていってね」
「怪物ね」
「最近それはあまり出ていないけれど」
「いえ」
上城がこう言うとだった。不意にだ。
彼の頭の中にあの声がしてきた。そのうえでだ。
声はその彼にだ。こう言ってきたのである。
「怪物は今ここに出ます」
「えっ、そうなんですか」
「はい、怪物との戦いについては」
「スタンスは変わりません」
出て来たならば戦う、そうするというのだ。
「そうさせてもらいます」
「これまで通りですね」
「では」
「はい、それでは」
声がこう言うとだった。すぐにだ。
上城、そして樹里の前に怪物が出て来た。それはというと。
巨大な蠍だった。優に四メートルは超えている。その蠍が上城の前に出て来た。その蠍に対してだ。
声は上城にだ。こう言ってきたのである。
「神話、星座の話ですが」
「確かオリオンでしたね」
「はい」
出て来たのはこの神話だった。
「その蠍です」
「オリオンを殺したという」
「いえ、オリオンはこの蠍を倒しています」
「あっ、そうだったんですか」
「オリオンは恋人に殺されたのです」
急にだ。声の調子が変わった。
悲しみを帯びたものになりだ。こう言ったのである。
「あの娘に」
「あの娘?」
「そう。自分の兄に騙された彼女にです」
オリオンは殺されたというのだ。
「そうなりました」
「あの娘というと」
「少なくともオリオンはこの蠍には殺されてはいません」
声は上城の問いには答えずにこう返してきた。
「倒しています」
「逆にそうしたんですか」
「それがこの蠍です」
オリジナルのものではないがそうだというのだ。
「その蠍にです。今から貴方は向かいます」
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