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万華鏡
第十九話 ビーチその七
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「そこまであったら」
「だよな」 
 美優も横から言う。
「そのウエストで七十八だとな」
「普通よね」
「ああ、普通だよ」
「八十は欲しいけれど」 
 景子は唇を尖らせて主張する、見ればその唇は元々尖り気味だ。その尖り気味の唇をさらに尖らせての言葉だった。
「もう少しだけ欲しいのよ」
「二センチ位は誤差じゃないの?」
 彩夏は首を傾げさせながら景子に言った。
「それ位だと」
「誤差っていうけれどこれがね」
「その二センチがっていうのね」
「誤差にならないのよ、私の場合は」
「ううん、そうなのね」
「だから困ってるのよ」
 あと二センチだけ欲しいがそれが埋まらないことがだというのだ。
「正直なところね」
「そうなのね」
「どうしたものかしら」
 景子は彩夏のその豊かな胸を見て言う。
「気にすることないっていうのが美優ちゃんの主張だけれど」
「景子ちゃんは脚だよな」
 美優は実際に景子のその脚を見ていた。
「制服の時から思っていたけれどさ」
「脚?」
「ああ、景子ちゃんの脚奇麗だよ」
「ううん、実際脚にはコンプレックス感じてないし」 
 景子は実際にその脚を見て言う。
「それでもね」
「胸もそんなに気にしなくていいよ」
「小さな胸がいい人がいるから?」
「そもそもそんなに小さくないしな」
 美優もこう言う。
「気にしないでいいよ」
「そうなの」
「胸が気にならないとな」
「脚?」
「その脚があるからさ」
 景子にはこれだというのだ。
「全然いいよ」
「だったらいいけれど」
「だから。スタイルってのは総合なんだよ」
「胸だけじゃないっていうのね」
「脚だけでもないしお尻だけでもないよ」
 景子と琴乃をそれぞれ褒めたこの二つについてもこうした意味で駄目出しをしてそのうえで話をする美優だった。
「総合なんだよ。胸だけが一メートルあってもな」
「ちょっと、それって」
「そうよね」
 琴乃だけでなく美優も言う。
「大き過ぎてそれこそ実際に持ってたら」
「バランス悪いわよね」
「胸って十センチ違うともう別物だから」
「一メートルあったらね」
「何かかえって気持ち悪いわよね」
「不気味でしょ」
 考えればそうなることだった。
「大き過ぎてもね」
「おかしいから」
「そうだよ、胸が大きければいいんだったらさ」
 美優もここで言う。
「ホルスタインが一番だよ」
「牛さんがなの」
「ああ、牛乳を提供してくれるしすき焼きにしても美味い」
 牛だからだ。
「そうなるだろ」
「牛乳や牛肉はいいとしてもよね」
「ああ、牛さんとはまた違うからな」
 人間のスタイル、それはだというのだ。
「だからなんだよ」
「胸が大きければいいっていうんじゃないのね」

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