弐ノ巻
かくとだに
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「じゃあ、僕はどうすればよかったんだ?あのまま、炎の中に瑠螺蔚さんを行かせろとでも?瑠螺蔚さんの気持ちを慮って、中にいるかいないかもわからない俊成殿の為に見殺しにした方が良かったのか!?」
「あたしは、死んでもよかった!」
瑠螺蔚さんは叫んだ。迷いのない声だった。
「兄上を助けて、あたしが身代わりに死んでもいいと思ってた。あたしのせいで、兄上、霊力をつかってしまって…だから、兄上が死ぬのなら、あたしも…一緒に…」
そのあとは咽び泣きに掻き消された。
「どうして、行かせてくれなかったの!どうして!?」
それは、魂の悲鳴だった。瑠螺蔚さんの魂が悲痛に叫んでいた。
「行かせたくなかった!」
「あたしは、兄上のところに行きたかった!」
憎いよ、俊成殿。例え親愛の情だとしても、ここまで瑠螺蔚さんの心を占めることができる貴方が。
僕が死んでも、瑠螺蔚さんは同じように嘆き悲しんでくれるだろうか。
「それを恋とはいわないのか!?」
「言わない!兄上のことは勿論好きだけど、それは恋なんかじゃない。あたしが死ぬ事で、他の誰かが助かるなら、あたしなんて、いらない!」
「瑠螺蔚さん!どうして自分の命をもっと大事にしないんだ。瑠螺蔚さんが俊成殿を想うように、瑠螺蔚さんも大切に思われてるんだと、どうして考えないんだ!」
「いやっ!あたしなんて…兄上も義母上も、誰一人助けられないあたしなんて…いらない!だから、兄上と義母上を、返して!会いたいよ…」
瑠螺蔚さんはいきなりその場に崩れ落ちた。慌てて抱き起すと、気を失っているようだった。気力が尽きたのか、それとも体力か。
「瑠螺蔚さん、嘘でも、いらないなんて言わないで…」
死んでもいいなんて、聞きたくなかった。
そっと瑠螺蔚さんの目尻の涙を拭った。僕も大分酷いことを言ってしまった。謝らなければ。
瑠螺蔚さんの鼻の天辺が寒さからか、赤くなっている。はやく屋敷へ戻ろう。風邪をひいてしまう。
『ほんっとうに、じゃまよね』
その時、声が聞こえてきたのだ。若い女子の声。
僕はぞくりとして辺りを見回した。
すると、僕たちが上がってきた岸辺に10ぐらいの女子が座っていた。
全く、気がつかなかった…。
『そいつも、あんたも』
女子はふいと一瞬だけこっちに目線を送ると、湖を向いた。
その女子
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