第十四話
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「向こうに良き姫君でも居られたらモノにして南トラキアを乗っ取ってやる!くらいのつもりで行きます。 ゆえに、ご案じ召さるな父上! 」
俺のこの宣言に
「儂は……儂は……」
父上は言葉を詰まらせ肩を震わせていた。
「心残りは兄上の不在を守れぬこと、しかし、今度の事とて父上を、国を、守るが為のことと兄上にお口添えいただけるでしょうか?ミュアハは約を違えてはいないと! 」
自分でも愚かなことと思いながらも口にしてしまうのはなぜだったのだろう。
「10年、いや5年待て!、奴らダインの末裔を一人残らず根切りにしてやる!」
父上の形相は鬼神や悪鬼というものが居るのなら、それを体現しているかの如きものであった。
「わたしは罪を犯して監獄に送られるわけではありません、賓客として隣の国でしばらく暮らす。ただそれだけのことです、わたしの身に何かあっては彼らとて食糧援助を打ち切られる。そう、わたしの身を気を付けて守らねばならないのは彼らのほうです」
ぼろぼろぼろぼろ涙をこぼすセルフィナさんに俺はなるべく優しく声をかけたつもりだった。
「嫌です!、どうして、どうして殿下が。 捕われたのはコノートの王様です!。ならばコノートの王家が責務を果たせば良いのです!その力量もわきまえず総大将を買って出て多くの兵に無念の死を強いただけでは飽き足らず、ミュアハさまをも奪い取ろうなどと天上の神々が許してもわたくしは絶対に許しません! 」
思わず俺はセルフィナさんの頬に手を触れた。
「良いですか、わたしのかわいいセルフィ、レンスターは北部トラキアの盟主です。頭の良い、いえ、天才と申し上げたほうが適切なあなたならおわかりでしょう。このような時にこそ、盟主としての高貴なる務めを果たさねばなりません。それにより北部トラキアがより強固に結ばれるならば、わたしにも生まれてきた価値があるというものです」
触れている手でセルフィナの頬をなでた。
「でん...ミュアハ様、わたくし、あなたを慕っていつまでもお待ちします。ですが、うつろいやすい気持ちを繋ぎとめるよすがを、何かの証を、いただけませんか」
瞳を閉じたセルフィナはくっと顎を上げた。
こんなに苦しいなら、この流れに従ったほうがいいだろうと思う心と、ほんとに大事なら中途半端なことや弄ぶようなことは止めろと思う心がせめぎ合う。
俺はこの世界では不正規な存在のはず、もしかしたらあの駄目なアイツの匙加減で今すぐにでもここからどこかに転移させられてしまうのかもしれない。
それにディアドラ、アルヴィスの2人をどうにかすることが出来たらクリアとかそんな感じで転移なのかも知れない。
そうしたら、残されたこの子はいつまでも、死ぬ迄、絶対戻らない者を待ち続ける
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